第39話 ジト目幼女と機械油

 しかし、どうやって一般人が違法薬物を入手することができるのだろうか?


 やはり、その手段としては夜の繁華街の怪しいお店とかクラブでひっそりと外国人がスッと怪しいパックを差し出してきて販売されているとか…そんな感じだろうか?


 俺が持っているイメージではそういう感じなのだが、実際に流行ってきていて、入手できる人が増えているということは、それなりの手法で薬を捌いていると考えるのが妥当だろう。


 特に若者を中心に普及している辺り、そこも何か関係があるかもしれない。


「ふむ…その辺も探ってみるか…」


 俺はニュースサイトを再び眺めてみるが、それと言った情報は見当たらなかった。


 まあ流石にこんなことまで書いてあるわけない…か。


 俺はニュースサイトを閉じると、検索窓にそれっぽいワードを入力していく。


「夜桜市…薬…いや、これはダメだ。だったら…夜桜市、ナイトクラブ…まあ出てくるがそれっぽいのは無いか…」


 あれこれ打ち込んで検索しては見るが、それっぽいものはヒットせず、無為に時間だけが過ぎていく。


 焦る気持ちもあるが、これはそういう作業だ。


 地道に地道に一つずつ可能性を潰して行って情報を集める。


 探偵の仕事とは、テレビやアニメの世界では割と犯人と直接推理を披露して対決したりするが、あれはあくまで演出であり、実際はもっと地味だ。


 こういう地道な作業の積み重ねが本来の探偵の仕事と言えると、俺は思っている。


 これでも昔に比べると大分楽になったとは思うけどね。


 昔は図書館でいちいち本を調べたり、直接歩いて情報を嗅ぎまわる必要があったのだから。


「インターネット様様だし、文明の利器に感謝だわな」


 かたかたとキーボードを操作して、次から次へと片っ端から検索をかけていく。


 そんな傍らふと時計を見ると時刻は二十三時を大幅に過ぎており、もうやがて日を跨ぐ時間だ。


 思った以上に作業に没頭していたらしい。


 俺は風呂に入るのをすっかり忘れていたので、一度作業を中断し、立ち上がる。


 母さんたちはもう入っただろうか?


 そんなことを考えながら振り向く。


「うわっ…!なんだ、いるなら声くらいかけろよ…!」


「なんだとはなんだ!こにょ無礼者!さっきから声をかけておったが全然反応しなかったではないか!とーこがさっさと風呂に入れと言っておったのじゃ」


 と、そこには金髪の髪はつやつやと輝いており、尻尾や耳の毛並みも心なしか湿り気を帯びて艶やかで、肌もぷるんともちもちなケモミミ幼女のコンが腕を組み、顔に浮かぶ二つの碧眼を細め、頬を膨らませて不機嫌そうな顔でこちらを睨みつけていた。


「あ…すまん、ゾーンに入ってたからつい…」


「なんじゃ、そのぞーんとやらは…おぬし、またすけべぇな事でもしておったのか?この変態ッ!」


 コンはぷりぷりと怒り腰に両手を当てながら、斜め上の予想を立てていたが、俺は右手を後頭部辺りに当てて軽くさすりながら素直に謝罪する。


「いや、そんなじゃねーよ!今日の事調べてたんだよ…」


「本当かのぅ…?ワシにあんなもの見せるし、ワシの裸見るし…いまいち信用ならんのじゃ…」


 と、明らかにこちらの事を疑っているコンは、ジト目でこちらを訝し気に睨みつける。


「いや、本当だって!」


「むきになる所が尚怪しいのじゃ…!」


 やけに嚙みついてくるコンにちゃんと説明してやるべく、身を反らして先程のpcの画面を見せる。


「はぁ…そんなにいうならホレ見てみ…?」


「ん…?なんじゃこれは?」


 コンは一度耳をピクリと反応させると、こちらにてとてとと駆け寄り、ぴょんと椅子に飛び乗ってそのまま座る。


 そして、表示されている画面を見るとたどたどしくも文字を読み上げていく。


「に、する、たなる…?うーなんじゃ…このうにょっとしたのは…蛇か何かか?」


「いや、なんで平仮名だけ読むんだよ…それにそれは蛇じゃない。アルファベットだ…」


「うーっ!読めんのじゃ!なんと書いておるのじゃ!?」


 コンは駄々っ子の様に手足をじたばたと動かし、椅子の上で暴れる。


 ブンブン振り回す手が、俺の頬を掠める。


「だーっ!こら、暴れるな…読んでやるから待てって!夜桜市に蔓延る新たなる薬物WD…だ」


「おお!なんじゃ、それならそうと最初から言わぬか!」


「いや、本当に分かってるのか?」


 必死でコンを宥めて、文章を読み上げると、素直に聞き入り大人しくなるコン。


 すると、椅子に座ったまま足を投げ出しプラプラと揺らしながら、のけ反る様に状態を反らして首を動かしこちらを覗き込むと、にっこり微笑みそう言った。


「ぬっ!馬鹿にするでない!ほらあれじゃろ?機械油の事じゃろ?」


「お前本当は分かってて言ってないか?」


 どこでそんな知識を得たのか。


 あれか、車のラジオで宣伝していたからか?


 変な事ばかり覚えるのは、子供特有というか…そういうところはまだガキだな。


「当たり前じゃ、神じゃからの!」


 コンは腕を組み無い胸を張ってどや顔で鼻息荒くフンスフンスと息巻いているが、ぱたぱたと揺れ動く尻尾も相まってちょっとウザかったので懲らしめてやろう。


「ま、違うんだが!」


「なにっ!騙しおったな!ぐるるるっ…!」


 俺がそう言うと、コンはお笑い芸人のコントの様にガックリと崩れ、崩れた勢いそのままに体をこちらに向けピョンと振り返ると、八重歯を剥き出しにして前のめりになり威嚇してくる。


「いや、騙してない…まあ、読み上げてやるからちょっと待て」


「ぐぬぬ…!」


 眉を吊り上げ、耳をピクピクと揺らし、尻尾も不満を表す様にふよんふよんと不規則に揺らして不機嫌になってしまったコンに対して、俺は右手を突き出し待ての体制を取ると、コンは不承不承と言った感じではあるが、その場にとどまる。


「ほら、えっと…」


 と、俺はpcの前に立つとマウスを操作して先程の記事を読み上げていくのだった。


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