第160話 ?月??日 不思議な朝
「パパ〜パパ〜起きて〜」
誰かに呼ばれる感覚がして目が覚める。
寝起きだからか、少しばかり視界が白いモヤみたいに覆われている様に感じた。
そんな中、呼ばれたというのは当たっていたらしく、見覚えがない女の子が僕の横に立っていた。
「む〜早く起きて〜起きないなら布団取る〜!!」
と女の子は僕の布団を思い切り取った。
「あ、――ちゃんと――ちゃん、またパパのところ入ってる〜ダメなんだよダメなんだよ」
布団取るや僕の上と隣を見ながら布団を取った女の子は怒り始めた。
他にも誰かいるのか?そう思った瞬間、まるでゲームのオートプレイの様に視線が勝手に動く。
まず最初は僕の上に乗っている女の子に視線が向く。
「――ちゃんもう少し静かにしてよ。今はおにぃの上でおにぃを満喫してるんだからさ」
満喫……おにぃ……いかにも美香がいいそうなことだな、なんて思いながらふといまだに僕の隣に立つ女の子を見る。
「ず、ずるい……で、でも……ママが起こしてきてって……」
隣に立つ女の子は何か葛藤している様に見える。
なんかこの感じ……凪に似てるな。
似ていると言ってはいるものの、先程から2人の顔はモヤがかかっており見えない。
またもや勝手に視線が動く。
次は上に乗っている女の子を通り越して反対側へと視線が移った。
そこには、僕の腕を枕にして寝ている女の子がいた。
この女の子にもモヤがかかっている。
「もー2人ともうるさい。ね〜翔ちゃんもそう思うでしょ?」
完全に美月だ……この子に関しては完全に美月だ。
「うるさいって何?――はずっと静かにしてたもん。うるさいのは――ちゃんだから。ね!おにぃ!」
と僕の上に乗る女の子は僕の胸にモヤがかかった顔ですりすりしてきた。
もう完全に美香だ……。
「そんな――もパパと寝たいのに……寝たいのに……もういい――も一緒に寝る」
先程まで立っていた女の子も僕の隣へと寝っ転がってしまった。
こういう流されやすいところまさしく凪だなと僕は思う。
……というか。
――――――
「結局寝とるやないかい!!」
と言いながら、僕はガバっと体を起こした。
「うわぁ!びっくりした」
体を起こしたと同時に聞き慣れた声が耳へと入ってくる。
「あれ、女の子たちは?」
先程、僕の上に乗っていた子と同じ雰囲気を感じる人物に、美香に僕は声をかける。
「女の子たち?何それ?ちょっと2人とも来て〜お兄ちゃんが女の子たちが出てくる夢を見てるよー」
夢と聞いて、あ〜夢かと思った。
それにしても、妙にリアルな夢だったなと僕は思う。
そんなことを思っていると、美香に呼ばれた2人が階段を上がって僕の部屋、いや、4人の寝室へと入ってくる。
「ん?美香ちゃん呼びましたか?」
「なんか女の子とか言ってなかった?」
「いや、お兄ちゃんが女の子たちの夢を見たって言ってて、流石にそれは見逃せないなって」
と美香はいう。
別に見るのは仕方ないだろ……と僕は思う。
見たくて見てるわけではないのだから。
「翔斗くん、流石にその歳でロリ……こほん、見ていい夢と見てはいけない夢があると思うよー」
「凪ちゃん違うかもよ?翔くんはわたし達の未来の子供の夢を見たのかもよ?」
「げ、何そのアニメみたいな内容」
3人の話を聞きながら、美月の言っていることはあながち間違いではないのかもと思う。
だって、夢に出てきた3人とも顔は見えなくても面影は見えたから。
てか、これを3人に確認すれば今すぐにでもわかるんじゃないか……なんてことを思いながら僕は未だ会話をする3人に質問をする。
「3人に質問なんだけどさ、もし子供ができたら僕のことなんて呼ばせる?」
「パパ」
と凪が
「翔ちゃん」
と美月が
「おにぃ」
と美香が
……うん、絶対3人の子供だわ。
「……わかった、ありがとう。美香、おにぃだけはやめてくれ」
「うん、やだよ」
何がうん、なんだろうか。
まぁ、いいや。
いつか子供が生まれたら、頑張ってお父さんかパパと呼ばせよう。
と思いながら僕は時計を確認する。
「え、もうこんな時間。急がないと遅刻しちゃうよ」
「「「うわ、本当だ」」」
今はそれどころではない、3人を養うための仕事に遅刻してしまう。
夢のこと、呼び方のことを一旦頭の端っこに追いやり、僕は準備を始める。
――――
準備しながらここまでの流れを僕は思い出す。
高校を卒業して、大学も卒業。
今年で僕は社会人四年目となる。
大学まではこの4人とも同じとこに通うことができた――美香の場合は一年遅れだが同じ大学。
色々大変なことはあったが、働き始めて4年目で僕たちは同じ家に住むことになった。
もちろん僕だけの稼ぎではやっていけないので4人ともそれぞれ違う仕事はしているが、今も変わらず仲良しだ。
高校の時に誓った3人のことを幸せにするという誓い。
それは今も尚、守り続けられている。
僕はこれからも3人のことを幸せにするべく、努力を怠らないつもりだ。
その中には先程見た夢も含まれているだろう。
まぁ、まだまだ先になりそうだが。
――――――
「「「「行ってきます!」」」」
4人揃って家を出る。
これはどんなに出社時間が違っても一緒に出るという僕たち4人で決めたルール。
この瞬間が僕は一番好きだ。
この瞬間を長く、永遠に続けていきたいと、僕は思う。
4人で住む家を背に、4人は最寄り駅へと向かう。
まだ登り切ってはいない太陽が、僕たち4人の表札――『古巻』と書かれた表札を、明るく照らした。
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160話読んで頂きありがとうございます!
この間から話していたとおり、これで一旦本編は区切りとします。
話数は本編160話のその他がいくつか。
文字数で言いますと40万文字いくか、いかないか。
本当にたくさんの方々に見てもらいここまで書くことができたと思います。
本当にありがとうございました。
今後はアフターストーリーとして、今から今回出てきた未来の日ぐらいまでをゆっくり書くつもりでいます。
という事で、大学編も書かなくてはいけなくなりました、、頑張ります。
改めてこれからもどうぞよろしくお願いします!
アフターストーリー1章、別名6章は少し時間をください。
しっかり構成を考えた上で更新します。
彼女に浮気をされた挙句振られたので、町でナンパをしたところ学校一の美少女でした。 まき さとる @TaKa1025
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