私は休むのが苦手だ。
@lapislapis
第1話 寄席
序文
高校教師である宮森はるか、彼女は休むのが苦手だ。時刻は定時をとっくに過ぎていて、社会科研究室の同僚はすでに全員帰宅。しかし彼女はまだ明日の授業準備が終わらない。
「…完全に煮詰まった。」
そう言って彼女はひとつ伸びをする。今日は木曜日。あと1日乗り越えれば週末という事実だけが、彼女の唯一の希望になっている。仕事は嫌いじゃないんだけどな、と彼女はぼんやりと考える。いまの学校に着任して、働きはじめてから4年が過ぎた。授業をするのは少し苦手だけれど、授業プランを考えたり生徒と関わったりすることは嫌いじゃない。そう思ってはいるものの知らず知らずのうちに蓄積される疲労とストレス。
「…週末、リセットしたいな。」
彼女は最近の研修でみた動画のことをふと思い出した。授業は、話術と板書が二本柱であることを研修の講師は述べていた。特に話術について、上達のいちばんの近道は話がうまいなと思う人の真似をしてみることである、とその講師は語る。彼女は話術スキルがあまり高くはない。授業をするよりも、授業を考える方が好きなのだ。
「そうだ、週末は寄席に行こう。」
彼女は話がうまいのは噺家だということで、思い立った。彼女は至極、真面目であるのだ。
私は休むのが苦手だ。 @lapislapis
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