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おれが旅立つときも中都市は中都市だった。まぁ、おれがいろいろと手を出し口を出したこともあって中核都市としての立場が強固になってこの辺りの治安はものすごく良くなった。開拓率も上がったがまぁなんだ、良い事だらけじゃあない。影響力にもムラがあるってことだ。良いところには蜜を吸おうとアリが群がる。その一言で察してくれ。
いろいろあっておれは旅立つことになった。長いこと尽力した名士(自称)が旅立つのに送ってくれるのはイエイェイさんだけだったのは悲しい。そうだよなあ、逃げるって言う言葉が正しいしなぁ。
次はどこへ行こうか、と考えた時に母上の顔が思い浮かんだ。顔を見せると言うか最初に行けと言われた街へ行ってみようかな、と思った。
西側へは馬車も出ていると言われたがおれは基本に戻って草むしりをしながら歩くことにした。
集落はスルーして都市を経由しつつ西側を目指す。入った都市で魔女組合に寄って依頼をこなしながら大回りしながら西側へ。
本格的に西側へ入るまで400年くらいかかった。
途中、木工職人に師事したり鍛冶職人に師事したり細工職人に師事したりと無節操に手を出しすぎた。
西側に入ると様相は一変する。整えられた街道に整えられた畑。東と違いこちらは区画整理がしっかりとされている。大都市から小都市まで連合意識がしっかりと伝わっていることがよく分かる。
西の大都市へ入り魔女組合へ。免状を見せるとものすごく驚かれ来るはずのものがやっと来たと言われた。母上から息子が行くからと言われていたらしい。さーせん。
さすがは大都市である。仕事が唸っていた。東側とは同じでも違った仕事を身につけられた。
植物と使った鉱石、いうなれば人工宝石を作る技術をうろ覚えで再現していろいろ作ったら一躍時の人になった。千客万来。工房を立ち上げ技術を広めていったらまた300年くらい経っていた。
1000
おれ氏来客がうざすぎて引きこもりに入る。
まぁ、工房の運営も弟子たちの手に渡っていたし技術も広まったからちょうどよかった。
唸るカネを使って奥地の山を買って結界を施し自給自足の生活をはじめた。
元々物理的な食事をそんなにとらなくてもいい種族だったからかそれとも性に合っていたのか畑を耕し植物と話し自然と触れ合う毎日がとてつもなく安心するものだとわかった。
ただ、不安なのは寝たり椅子に座ったりして目を閉じると時間が跳ぶということだ。これはどういうことだろうか。年齢的なものか? 多分1000歳くらいだろうし老衰が近いのか?
寝ている間にぽっくりいくならそれで良しだな。気にしないでおこう。
不明
寝たり椅子に座って目を閉じると跳ぶ時間が加速している。5時間くらいだったものが1年になり10年になり今は100年単位で跳んでいる気がする。いや、1000年かも。
だんだんとやることもなくなっていてもう何年も家の外に出ていない。結界の外側がどうなっているのか。その興味も薄まってしまった。
さんさんと降り注ぐ陽の光とこんこんと出る湧き水だけをとって生きている。太陽が生きていて湧き水もでているってことはこの星は生きているのだろう。光合成だけで生きている。これは生物として生きていると言えるのだろうか。
日向に座って目を閉じて開いて水を飲む。そんな日常を壊したのは一体の龍だった。おれと同じように身体中に苔と草と木が生えた龍。見た瞬間に分かった。父上だ。
父上は言った。そろそろ戻るぞ、と。
どこへ戻る? おれはどこから来た? どこへゆく?
淡い思考と意識がだんだんと薄れてゆく。先程までと違う強力な睡魔。眠気。おれの意識はむしり取られテレビの電源を切るように視界は黒く切れた。
*
目を覚ますとおれはベッドの上だった。ひどい頭痛とともにどっと記憶が押し寄せてくる。出会ってきた人、学んできた技術、そして龍人のおれ。
白い服を着た人たちが代わる代わるおれの頭をいじっていった。
おれはなすがままで日光照射器の前に座り水を飲みながら残りの生を潰した。その期間は龍人として生きた期間からしたら短いものだった。得るものもなくただぼーっと座っているだけ。最後に目に写ったのは淡い色のカーテンと白い天井だった。
過仕事さんの治療疑似転生 初月・龍尖 @uituki
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