第11話 NTR

 別棟の3F男子トイレ、この滅多に人が来ないトイレに進達は入っていく。1番奥のトイレに3人で入ると、悠里が鍵をガチャリと閉めた。

 今更ながら、2人の女の子と男子トイレの個室に入るというシチュエーションに気恥ずかしさと興奮が湧き上がってきた進。


「さて、じゃあ進ちゃんを改造しますか」

「後ろは任せろよ、進」


 どこかきょどっている進に、2人がかりで髪をセットしていく。男子トイレの個室という密室の中で、服と服が擦れるような距離にいる3人。

 進の心拍数はどんどん高まっていく。2人の優しい手つきと間近で見る端正な顔立ちに、思わず進は、目を瞑った。しかし、進は逃げることができない。目を瞑ったことにより、より一層感じられる2人の香り、男というにはあまりにも、あまりにもなその良い匂いに進は昏倒しそうになる。


 そんな格闘を続けて、5分ほどがすぎただろうか。できたよー。という悠里の声に目を開ける進。そこには見違えるようなイケメン男子高校生がいた。そう、進の素材は結構良かった。


「意外とやるじゃんか、進」

「ねー、まさかこんなに変わるとは」


 2人はそう言いながら、進の写真を撮っていく。気恥ずかしさはあったが、それでも進は少しだけ自信がついた。灰色の高校生活になるかと思っていたが、このままいけば念願の彼女ができるかもしれない。


「2人ともありがとう、これで僕にも彼女ができるかな」


 ポツリと漏らした進の言葉に、瑞稀と悠里は一瞬だけ凍りついた。数秒の静寂があった後、2人は口を開く。


「ま、まぁ、そんな簡単にはできないだろ」

「そうだよ、進ちゃん。あんまり調子に乗らないの」


 そう言って2人は進の頬を引っ張る。ぐにゃぐにゃと頬を引っ張られるも、これからの学校生活に胸躍らせる進に2人の声は届かない。


 結局にやけが止まらなかった進。3人が教室に戻るとクラスは明らかにざわついた。女の子何人かが、瑞稀と悠里に話しかける。


「え?2人の隣にいる、この人って...歩前くん...?」


 瑞稀と悠里の間に緊張が走る。一方、そんな2人を気にも止めず進は舞い上がっていた。クラスの女子から話しかけられた。今までの人生で進が女子に話しかけられたことなど、ほぼなかった。進の頭の中はエネルギーで満ち溢れる。あまりの衝動に進は一旦、目を瞑る。


 僕はついにやったんだ!僕でも変われたんだ!これは間違いなくこの女の子達といい感じになって...。

 そして、いや、待てよ。落ち着いて、今話しかけてきた女の子の数を数えよう。1、2、3...。

 3人だ。僕は3人の女の子に話しかけられたんだ!そして、この3人は、もはや僕の彼女候補、いや彼女と言っても過言ではない...!!

 ということは、僕は今、3+1、つまり4Pができるってことか!?今まで灰色の学校生活を送ってきた僕が4P!?

 それに、まぁ、仕方がないから一ノ瀬くんと葉月くんも入れてあげるとしたら...。おい、嘘だろ。6P...。僕は今6Pできるのか...!?


 間違いない。僕は神に選ばれている。そして、神は言っている。僕に6Pせよ、と。


 そうして、進は鉄は熱いうちに打て、行動に移そうとゆっくりと目を開けた。進の目に飛び込んできた光景。


 それは、もはや進の事など見向きもしていない、さっき話しかけてきた女子達。そして、その女子達といちゃついている瑞稀と悠里。


「え!?ちょっと!?どういうこと!?」


 進は思わず声を上げる。


「いや、どういう事っていうか、ねぇ?」

「僕達と進ちゃんじゃ、ステージが違うんだよ。諦めなって」


  2人を取り囲むように、そして2人を誘うように振る舞う、さっき話しかけてきた女子達、そして、そんな女子達にイケメンスマイルで対応する瑞稀と悠里。

 進は格の差を見せつけられた。悔しそうに下を向き、唇を噛み締める進。己の無力さを突きつけられ項垂れる進を見て、瑞稀と悠里はゾクゾクとした感情に襲われていた。


 進は自身の感情を整理し、もう一度前を向く。そう、僕がやるべき事は瑞稀と悠里への復讐だ。そして、今日の出来事はさらなる原動力となる。進は2人に背を向けると、いつものように自分の席に戻り、寝たふりをする。しかし、彼の中にある復讐の炎は決して眠る事なく燃え続けていた。


 絶対にセクハラしてやるからな...。そう固く誓い、進は束の間の眠りに落ちた。

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僕をいじめてくる2人のイケメンが、どっちも男装女子だった件について〜仕返しにセクハラしていこうと思いますが、僕の体はもたないかもしれない〜 スパイスマン @spiceman

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