第10話 改造計画
進が精魂尽き果てるまで励んだ、あの入浴写真事件から数日が経ったある日。相変わらず、昼休みには瑞稀と悠里にパシられ、パンと飲み物を買う進。
本日の昼休みももちろんパシられていた進が、息も絶え絶えに教室に戻ってくる。
「お疲れ、進」
「今日も良い働きっぷりだね〜」
そんな風に2人が声をかけてくる。ははは、と苦笑いを浮かべながらパンと飲み物を配ると、2人は進の頭に手を伸ばす。そして、そのままわしゃわしゃと進の頭を撫で始めた。
「偉いぞ〜」
「偉いよ、進ちゃん」
そう言いながら頭を撫で続け、一通り進の頭を撫で終えた後、2人はニッコリと笑う。
「それじゃ、私が進の頭を撫でたんだから、進も俺の頭を撫でないとな」
「僕もおねがーい」
そう、進が初めて復讐を実行したあの日以来、3人の間では、なぜかこのようなルールができてしまった。たしかに、最初に行ったのは進だが、まさかの展開に進はたじろいでいた。
「い、いや。でもさ...」
進が渋っていると2人はそれぞれ進のサイドに立ち、進と肩を組んでくる。
「でもさ、じゃないよな?ほら、俺達男同士なんだから、俺らが触った分、ちゃーんと触り返さないとダメだよな?」
「そうだよ、進ちゃん。男同士なら当然の事だよね?それとも、進ちゃんにとってなんかやましいことでもあるのかなぁ?」
左右から2人の甘い声がする。流石の攻勢に進も降参した。わかったよ、もう。と言いながら2人の頭を撫でる進。柔らかい髪の毛を丁寧に手のひらで撫でていく。
えへへへへ...。と可愛らしく笑う2人に、自ずと心拍数が上がっていく進。いや、この2人は僕をいじめたり、パシリにしてきた2人なんだぞ!と自分に言い聞かせながら、瑞稀と悠里の頭を撫で続ける。
「はい、もうおしまい!」
そう言って手を離す進を名残惜しそうに見つめる2人。進は、再度2人の頭に手を伸ばしそうになる自分をグッと抑え、顔を真っ赤にしながら弁当を食べ始める。
「あー、進ちゃん照れてる〜」
そう言ってニヤニヤしている悠里に対し、なんの反論もできぬまま、弁当をかきこむ進。
「それにしても進の髪の毛って以外とさらさらで触ってて心地いいんだよな」
そんな風に瑞稀が話し始め、悠里も乗っかってくる。
「そうだよねぇ。っていうか進ちゃん、髪とかセットしないの?そのボサボサ頭、整えてみたらちょっとは変わるかもよ?」
「確かにそうかもなぁ。そうだ、折角だから今日は進くんをイケイケ男子高校生に改造してあげますか」
そんな2人の会話に、別にいいよぉ。と返答する進。しかし、華の男子高校生。そのイメチェンにはとても興味があった。進自身にはイメチェンできるような技術も度胸もない。そんな進に降って湧いたチャンスなのだ。口ではこう言いながらも内心では改造計画来い!!と力強く祈り続ける進。
そんな進の様子を見て、何かを理解したようにニヤァという笑みを浮かべる2人。
「まぁ、進がそう言うならいいかぁ。無理強いするのもなんだしな」
「そうだねぇ、なんか進ちゃん。ごめんねぇ」
ニヤニヤとしながら進を見つめる2人。ごめんごめんといいながら、進のほっぺたをつつく。
進は下を向きながら、顔を真っ赤にしてプルプルと震える。イメチェンしてみたいという思いと、この2人に抗いたいという思いをのせた天秤が揺れ動く。
そして、とうとう進は顔を上げる。
「...改造してください」
ボソッと呟く進。そんな進の言葉に悪魔のような笑顔を浮かべる2人。
「あれー?進ぅ、今なんて言った?全然聞こえなかったなぁ?」
「進ちゃーん、ダメだよぉ。僕たちに聞こえるように、ちゃんと大きな声で言わないとさぁ」
そんな2人の言葉に、拳をギュッと握りしめ、悔しそうな表情を浮かべる進。
「僕を、イケてる高校生に、改造してくださいッッッッ」
進は南無三と頭の中で唱え、ついに降伏した。そんな進の様子に爆笑してしまう2人。そんなに笑わなくたっていいじゃないか...。と顔を赤くしたままそっぽを向く進に対して、ごめんごめん。と言いながら2人は進の頭を撫でる。
「それじゃ、トイレ行こっか。」
こうして、進をイケてる男子高校生に改造する計画が始まった。
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