第10話 宇宙人と地獄ラーメンデスマッチ


地獄ラーメン

それは星間高校創立以来この食堂で月に一度だけ販売される限定メニューである

創立以来この高校の食堂に勤める食堂のおばちゃんしか作る事の出来ない伝説のラーメン

なんでもこの学校の食堂に勤める前までは本場老舗の中華料理屋にずっと勤めていて数々の美食屋達の舌を唸らせたら腕前を持っているんだとか無いんだとか

地獄ラーメンとは名前の通り地獄の様な辛さのラーメンである

この学校で完食できた物は未だかつて一人も居ないラーメンから登り立つ湯気だけでむせ返るくらいの強烈な辛さ スープを飲もう物なら死人が出るかもしれないレベルの致死量の辛さ

最近ではめっきり注文する人は居なくなったが

この学校の隠れた名物と言っても間違いは無いだろう

完食した者はこの学校の歴史に名前が刻まれる事だろう


宮田「ってな感じなんですよ!地獄ラーメンとは!お分かりいただけましたか?」

亜梨沙「コイツ一人で誰に喋ってんだよ…」

瑠璃香「相変わらず一人でうざい奴なんだゾ!」

葵「でもそんなメニューあったんだね 私知らなかった」

亜梨沙「私は聞いた事あったけど実際に誰かが食べてるのは確かに見た事ないねぇ 瑠璃香あんた変なモン好きなんだから食べれるんじゃない?」

瑠璃香「うーぅーぅ 辛いの無理なんだゾ… 瑠璃香は甘党だからな!餡子ラーメンとかチョコレートラーメンなら食べてみたいゾ!」

亜梨沙「そんなのアンタにしか需要無いでしょうが…」

宮田「ふっふっ 大丈夫ですよ星宮さん 今日この宮田白馬が地獄ラーメンを見せて差し上げますぞ!そして見事完食して蒼柳君と僕、どっちが星宮さんに相応しいか証明してあげますぞ!」

星宮「い、いや…そんなラーメン食べてるところ見せられても困るって言うか…」

亜梨沙「そいや蒼柳居なくない?」


見渡すと蒼柳君の姿が無い

すると食堂から騒めき声が聞こえた

なんの騒ぎだ?四人は食堂に向かうと生徒達が何やら騒いでいた


生徒達「まじかよ地獄ラーメン注文する奴初めて見たぜ」

「死ぬ程辛いらしいぜ 昔大口叩いて食った奴が救急車で運ばれたらしいからな」

「でも私見た事無いからどんなんか気になるかも」

「それなぁ!私も話でしか聞いたことないし!」

「アイツもどーせ残すだろうな はっはっはっ」

「ありゃ食い切ったら有名人だぜ」

「お前悪ふざけなら辞めとけって忠告してやれよ」


口々に生徒達が食堂のカウンターの方を見て騒いでいた

話を聞く限り地獄ラーメンを注文した生徒がいるみたいだ

四人は騒ぎのカウンターの方に向かうと


蒼柳「地獄ラーメンを頼む」

葵「って 蒼柳君じゃーーーん!」

亜梨沙「あっははは もう頼んでんじゃん」

瑠璃香「むーー 蒼柳シュウヤ 奴はきっと怖いもの知らずの変態なんだゾ!」

宮田「あ、蒼柳君… 僕の説明も無視してもう注目してるなんて なるほどいい挑発ですね ですがそんな挑発僕は乗りませんよ」


宮田はカウンターまでダッシュした


亜梨沙「めちゃくちゃ挑発乗ってんじゃん… てか蒼柳ってあんな宮田のふざけた挑戦乗るタイプなんだなんも興味無さそうなのにね」

葵「確かに!私もそれ思った ふん、くだらん とか言いそうなのにね」

亜梨沙「んー あれあれぇー もしかして宮田に葵取られたく無いから蒼柳も負けじと勝負受けたとか〜?」

葵「い、いや、それは無いって無いって!あの変人冷酷な蒼柳君に限ってそれは無いって!そ、それに自分の事宇宙人とかよく分からない事言ってるし…蒼柳君の事私もまだ良く知らないし」

瑠璃香「だっはっはっ 葵っち焦って顔が赤くなってるんだゾー!」

亜梨沙「葵が照れるなんて珍しいね〜 いつもより声小さいし〜」

葵「だから違うってばーーー!」


三人でワイワイ騒いでいる中

食堂のカウンターでは緊張した空気が張り詰めていた


食堂のおばちゃん「地獄ラーメン一つね にしてもいつ振りの注文かしらね アンタ転校生かい?」

蒼柳「ん?まぁそうだが」

食堂のおばちゃん「なるほどねぇ 本当にアンタ食べ切れる自信はあるのかい?今まで何人も注文して来た生徒達は居るけどねぇ ちゃんと食べれた子なんていやしないのさ」

蒼柳「俺に不可能は無い 俺が歴史に名を刻むのだ」


蒼柳は宇宙では覇者になりかけた宇宙人の為

勝負を仕掛けられその勝負から逃げるという行為は自分の中であり得ないのだ

それに完食したら名が残るとかそうゆう系の話に弱いのだ

葵達が騒いでいる様な事でこの宮田の勝負を受けたと言う事は一切無いのである


食堂のおばちゃん「まぁなんだかよく分からないけど   本当に良いんだね?後悔はないね?」

蒼柳「あぁ 頼む」

(な、なんだこの緊張感は この食堂のおばあちゃんと名乗る人間 只者では無いな 一瞬で空気が変わったぞ… 地獄ラーメンとは一体…)

食堂のおばちゃん「はいよ」


おばちゃんはニコリと笑った

おばちゃんを只者では無いと感じた蒼柳はゴクリと生唾を飲み込んだ

おばちゃんが厨房の方に行こうとすると


宮田「ちょっと待ったーーーー」


風を切るが如くカウンター前に現れた宮田


宮田「ふっふっふ 僕を忘れて貰っては困りますよ蒼柳君 おばちゃん僕にも地獄ラーメンを一つ」

食堂のおばちゃん「あら、アンタもかい こんな地獄ラーメンが出るなんていつ振りかしらねぇ でもアンタも覚悟は出来るでかい?見栄っ張りなら…」

宮田「いやいや、大丈夫ですとも この日の為に僕はあらゆる激辛ラーメンを食べてきました 何度か死に掛けた事もありましたが、不死鳥の如く蘇りそして僕は手に入れたのですよ、辛い物に対する免疫と体質をね この苦労も全て星宮さんに僕の熱くホットな想いを届ける為の…」

食堂のおばちゃん「はいよ、地獄ラーメン二つね、ちょっと待っててね」


おばちゃんはゆっくりと厨房へと消えて行った


蒼柳「宮田と言ったな貴様、口だけは達者な奴な様だな」

宮田「蒼柳君フライング注文はずるいですよ そして僕の説明を最後まで聞かなかったことを後悔しますよ」


二人の間にバチバチと火花が飛び交った

二人はテーブルにに向かい合わせに座り

そのすぐ横のテーブルに葵達三人は座った

気づく二人の席の周りは生徒達のギャラリーでいっぱいだった


亜梨沙「ラーメン如きでこんななるなんてね…」

葵「ほ、本当だよね…」

瑠璃香「決闘なんだゾ!葵っちを掛けた勝負なんだゾ!」

葵「ちょ、ルリルリやめてよ!!」



そうこうしている間にラーメンが出来上がった


食堂のおばちゃん「あいよ 地獄ラーメン二つね」

蒼柳、宮田「こ、これが地獄ラーメン、ゴクリ」


地獄ラーメンが二人の目前に現れた瞬間

食堂全体の体温が上がった気がした

具材はシンプルだが真っ赤なスープに綺麗な地縮れ麺 赤ワインの赤より赤いスープはまるで地獄だ

閻魔大王くらしいか好んでは食べないだろうと言わんばかりのルックスのラーメン

ギャラリー達も騒めく

食堂全体が暑くなりラーメンか漂う匂いで汗が噴き出てくる


宮田「な、なるほどなるほど」

蒼柳「ふ、ふん まぁ想像通りだな」


涼しい顔をして眼鏡を指で上げる宮田

クールな表情で何事もない様な表情でラーメンを迎え入れた蒼柳

二人は心の中でこう思った


蒼柳、宮田(めちゃくちゃやべぇじゃねぇかぁぁぁ)

宮田(え、ちょ、ちょっと待って 全然違うじゃん

ラーメンじゃないじゃん 地獄じゃん スープの中になんか地獄に落ちた人見たいの見えて来たんですけど)

蒼柳(お、おい なんだこれは 宇宙でも見た事ないぞ なんだこの化け物の様なラーメンは どうやって産み出したのだ ダークマターではないか あの食堂のおばちゃんは何かの能力者か? こんなもの食えるのか おいおい宮田本気か貴様?)


宮田「ふぅー やっと食べれますね地獄ラーメン

いい香りですねぇぇ」


蒼柳(こ、こいつ正気か?こいつの事を俺は舐めていたらしい なんて涼しい顔をしてやがる)


宮田(あー言っちゃったー!強がっちゃったー!無理無理無理 絶対食べれないよ 僕が食べて来た激辛カップラーメンと全然違うじゃん みんな見てるしどーすんのこれ⁉︎)


蒼柳「ふん つべこべ言わずささっと食べてみたらどうだ?」


宮田(あ、蒼柳君 この野郎! 僕に毒見させる気だなそうはいかないですよ)


宮田「ではご一緒に頂きましょうか ニッコリ」


蒼柳(チッ宮田 貴様どうやらバカではないらしいな 仕方あるまい この俺がこんな地球の食い物などに負ける訳があるまい)


蒼柳「いいだろう」

宮田「ではいいだまーす」


二人は麺を箸で取りギャラリーが見守る中麺啜った


蒼柳、宮田(ん、こ、これは!)


蒼柳、宮田「ぐっばァァァァァァァァァァ!」


二人は叫び声と共に鼻から鼻血を噴き出した

宙に舞い飛び交うお互いの鼻血

それはまるで地獄から飛び交う八岐大蛇

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蒼く輝く空の向こうに 黒烏龍茶 @118gero

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