第24話 楓の衝撃発言!?
授業中、楓は普通に自分の席にいた。廊下にはそれを聞きつけた
マスコミ達がやって来ていた。流石に教室には入ってこないが
それでもカメラがずっと楓を追っていた。
授業が終わる瞬間をマスコミ達は待ち構えているが、楓は
その先を行く。チャイムが鳴る一分前に席を立ち、窓から
下に飛び降りた。ちなみにここは三階だ。そこにいた全員が
窓の下を見た。当然マスコミ達も入ってくる。楓は平然と
下に降りていた。
下にも当然マスコミはいたが、楓は見つかることなく校内に
戻り、職員室に入った。
「お前、どうするんだ?」
「どうもこうもしないっすよ。勝手に奴らが騒いでるだけ
ですからね」
「そうかもしれないが、お前が何か言わないと治らないぞ」
「まぁ適当にするさ。俺は存在しないんだからな」
「霧沢」
先生と話をして、それから教室に戻った。放課後も楓は
見つからないように下校した。
ヤス達に今日は練習を止めると連絡して、部屋に帰った。
少しすると由姫から連絡があった。楓は問題ないと返事を
した。由姫は心配そうに話していた。他のメンバーからも
どうすればいいか聞かれて楓は少し面倒になっていた。
「さて、どうするか」
初めて楓は自分の事を考えた。こんな風になってからはもう
自分の事はどうでもいいと思っていたからだ。
それを考えて答えを出したのは次のライブの時だった。
楽屋でも由姫が楓の所に来て話を聞いていた。
「本当に大丈夫?」
「心配ない。まぁお前達には悪い事をするかもしれないがな」
「私達に?」
「まだこいつらにも言ってないから、こいつらにもだな」
「何だよまだ俺達に言ってないって」
「まさか悪い方じゃないよな」
「お前らは何も考えるな。演奏だけに集中しろ」
ヤス達は言われた通りにした。これ以上は聞いても答えない
とわかっていたからだ。そうしてこの日のラストを楓達が
飾り、ライブは盛り上がった。
そして、誰もが楓から何かあるんじゃないかと待っていた。それは
マスコミも同じで、会場と外には大勢いた。そんな中で演奏を
終えて、楓がステージの中央に立った。
そこでマイクを持ち、楓が話し出す。由姫達も楽屋でそれを
見ている。
「俺達、uranosはデビューする事にした!」
その声に全員が驚いた。当然ヤス達も。
「楓俺ら何も聞いてないぞ!」
「言ってないからな」
「デビューってこの大会はどうするんだ?」
「もちろん続ける。だが、俺らが優勝する事はしない。だから
これからは俺らに票を入れなくていい。俺ら勝手に参加
してるだけだと思ってくれ」
「あの」
マスコミの女性の人が楓に質問した。
「今の発言にも驚いたんですが、その、あの話は本当なんでか?」
「さぁな。俺が言えるのは俺は存在しないという事だ」
「存在しない?」
「まぁ調べたいなら好きにしな。だが、俺の周りに何かしたら
マスコミだろうが誰だろうが容赦はしない。それがわかってる
なら好きにしな」
楓のその言葉に凍りつくマスコミ達。楓は普通に言ったつもり
だが、目が本気だったからだ。
楽屋に戻った楓達。そこに由姫がいた。
「楓、デビューってほんと?」
「ああ。まだ確定じゃないがな」
「確定じゃないのかよ!」
「お前らは黙ってろ」
「楓、聞かせて」
「仕方ない」
楓はここにいる全員に決めた事を説明した。それはこれまで
スカウトしてきた中からデビューする会社を決めてそこと
話し合い、デビューする事を決めた。この騒動の事も含めて
それを理解してくれたのがその一社だったので楓はそこに
決めたようだ。
その騒動に関して、楓はメンバーにも由姫達にも話した。自分に
親がいない事、この名前は本当の名前じゃない事も。
それを聞いてさっきまで少し浮かれていたヤス達も自然と
暗い表情になった。それは由姫達も同じだ。
「お前にそんな過去があったなんてな」
「悪い。俺ら何も知らなかったから」
「気にするな。俺の事は何も気にする事はない」
「そうはいかないだろ」
「ああ。お前はもう俺らの仲間なんだからな」
「それでいて俺達のリーダーだ。そのリーダーの事を何も
知らないのは同じバンドメンバーじゃないぞ」
「ああ。これからは俺らもお前の事をもっと知る必要が
ある。だから教えてもらうぞ」
楓は表情には出さなかったが、仲間と言われて少し動揺
した。それでも表情を変える事はしなかったが、初めて
嬉しいとも思った。
「楓、この大会では勝負はつかなかったけど、今度はプロ
で勝負よ。だから私達は必ず優勝する。予選を勝ってあの
アリーナに立って、プロに行くわ」
「そうか。頑張りな。俺らは先に行く。そこで待ってる」
「ええ。必ず行くわ」
由姫達は楽屋を出た。楓達もその後に出ると、まだファン達が
待っていて、デビューおめでとうと拍手をもらったりファン達
がそこで楓達の曲を歌ったりした。その様子はメディアにも
取り上げられ、翌日には楓達の事で話題は持ちきりになっていた。
そんな中、由姫達は次のPVを作成していた。
今は十一月の一周目。今月で予選が終わり、来月の二十四日に
本線が開幕する。その本線は二回だけのライブになる。
由姫達はその本線の前にPVを公表する予定にした。
それはもちろん予選を勝ち上がる前提でだ。予選の結果は
十二月一周目の日曜日に発表される。その予定を含めて
今は色々と準備をしていく。
この日は由姫の部屋で集まり、他の会場のライブを
見ていた。由姫達以外にも当然有名なバンドはたくさん
いる。その中で美麗が気になっているバンドがあった。
「ハイパースマイル?何そのふざけた名前のバンドは?」
「知らないんですか?今めっちゃ話題ですよ。バンド
何だけど、ダンスもあったりいきなり演劇したりで楽しい
って有名なんですよ」
「演劇?ライブで?」
「はい。何でも有名な女優さんの娘さんがいるらしくて。あと
超お金持ちの子もいるみたいなんです」
「そんなので成立してるのかしら?」
「それがしてるらしいよ。その女優さんの娘さんが親ゆずりの
カリスマ性があって、女性ファンも多いらしい。そんな彼女と
超お金持ちの子が一緒に派手な演技をして話題なのよ」
「そう。私達には関係ないわね」
「でも、優勝候補だから気にしてた方がいいわよ」
「誰が来ても一緒よ。私達が優勝する。それ以外の未来は
ないわ」
「相変わらずの自信だね。ま、それぐらいの気持ちが
ないと勝てないもんね」
「そうですよ。私達が絶対勝ちます」
「そうね。美波さんの歌が誰かに負けるはずがありませんから」
由姫達は改めて優勝を目指す気持ちを持ち、大会に挑んで
行くことにした。
いつかあなたに会いに行くわ 3698 @daproject3
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