エピローグ
穏やかな陽射しが窓から差し込むある日のこと。
社長が、僕たちの研究室に来てくれた。お土産のお菓子を持って、駒井さんと。
拓也からは、「速攻で行く」とLINEの返信が来る。
荻野さんと僕でコーヒーを用意する間に、僕は机から父の「封筒」を取り出して、社長に見てもらう。
父の手書きの実験メモもあって、社長が興味深そうに見ている。
「あぁ。これのことか」
社長が何かを見つけて笑っている。
「ええ。俺はこれ見て、やるって決めたんです」
駒井さんの声がする。
僕が、研究室のコーヒーカップを探しながら、「それが製品になったのも、ポーラベア電子のみなさんのおかげです」とお礼を言うと、二人は、なぜか大声で笑う。
荻野さんが、小分けしたスイーツを運び、社長の手元の紙片を覗き込んで、笑っている。
「まだまだ、私がちゃんと育てますから、ご安心ください」
そんなことを言う。
そして拓也も、「大丈夫、俺についてこい」と笑う。
幼い頃、僕は、森の中を突っ走っていく子供だった。
発見した「新種の」植物を握りしめ、森の茂みの中で微笑む少年の「写真」を、父はいつも大切に持っていた。
小さな観葉植物は、今も僕のそばで、静かに呼吸をしている。
……信じてくれる仲間と一緒に、夢に向かいなさい……
父が遺した「封筒」には、父の「夢」がつまっていた。
了
INNOVATOR(イノベーター) 榎本教授 @大阪工業大学 @innovator
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