第6話 モヤッとした正体は

窓越しに流れる景色をぼーっと眺める。日が沈むところを見ると、夜に昂良さんと幹太さんとの話を思い出す。それぞれの人は卒業後にどうしたいか、話をしていた。昂良さんはインターシップ先で働きたい、そして、幹太さんは大学に進学して、デザインとか学びたいと言った。僕はどうしたいかはまだ決めていないので、まだ決めていないと答えた。


「幹太さんは、大学に進学するか…。あれ?僕って、さっきからずっと幹太さんのことばかり考えてるのかな?」


帰りの途中に幹太さんのことばかり考えていたことをようやく気づいた。なんでこのことを考えているのか、腕を組んで考えてみた。幹太さんはコミュ障である僕でも普通に話しかけてくれたから?幹太さんは一人だけ寂しく思う僕に気づいて、話しかけてくれたから?幹太さんはぽっちゃりなので、その場で雰囲気を和ませることができるから?幹太さんの良いところを次々と浮かんでいく。昂良さんの良いところは簡単に見つからないのに、なぜか幹太さんだけ良いところをすぐに見つけられるなのかな?もしかしたら僕って幹太さんのことばかり見ているからかな?

ハッと気づいた。


「もしかしたら僕は幹太さんに恋に落ちていた?」


ブンブンと首を振った。幹太さんは男だ。男同士に付き合うのはあり得ないわ。

勝手に頭の中でさまざまな筋道を通して、無理矢理に結論まで導いた。結論を出したので、もう考えるのをやめよ、と独り言で呟いた。

しばらく静かにすると、まだ気持ちがモヤモヤしている。この気持ちを解消するためにインターネットで検索してみることにした。検索した結果は、今時男性同士に交際するのは当たり前になっている。男性同士に交際するのは漫画や小説だけだと思ったが、現実でもあると初めて知った。異性同士に付き合わなければならないという考えはもう古くなっていた。少しずつ考え方が変わり、恋愛のスタイルも多様化が進んでいるとわかり、なんだか嬉しいと思った。


「僕は幹太さんのこと好き。だから、幹太さんが進学する大学に行ってみようか」


将来が見えない僕が何をしたいか、ついに決めた。大学入試を受けるために勉強を始めないと、確実に合格するのは難しい。大変になると思うが、幹太さんの隣に居られると想像するだけで勉強のモチベーションが上がる。頑張るぞと、強く握りつぶした。

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モヤッとした気持ちの正体は何? 龍川嵐 @takaccti

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