第42話 いつかの私といつかのあなたー①

 いつからそう想っていたのかと聞かれると難しいけれど、自覚したのは大学受験の頃だったかな。


 『自分は一人で生きていくんだ』って、私はそう想ってた。


 だから、早く一人で生きていけるようにならなくちゃいけなかった。


 だから、大学について親に聞かれた時に、特に迷いもせず家を出ると応えたんだ。


 反対されたから、願書は勝手に書いて出した。受験のお金も自分の貯蓄を切り崩して勝手に払った。


 無断で下宿させるような奴に出す金はない、というから、じゃあ働いて自分で稼ぐと答えた。そんなのあんたにできっこないっていう、母親のため息だけはよく覚えてる。


 だから私は、自分で勝手に奨学金を見つけてきた。大学が受かり次第、バイトの面接にも言ったし、住むところだって自分で探した。学費は特待生の扱いになったからあまり考えなくて済んだのは幸いだった。


 ともあれそうやって、私が勝手に決めた家を出て一人で生きるという目的は案外あっさり達成できた。


 ルームシェアという形を選んだのは、安下宿に女一人で転がり込むのはそれでも若干怖かったからかな。


 今思うと、心の奥にほんの少しだけ隙があったのだと思う。


 それでもやっぱり誰かに助けてほしいっていう。そんな些細な隙が。



 一人で生きていくんだって想ってた。



 でも誰かに助けて欲しいって想ってた。



 私はそんな矛盾した奴だった。



 今想うと、我ながら酷くみっともないんだけれど。



 ……いや、今でも結局みっともないね。矛盾してることに何も違いはないんだから。



 ともあれまあ、これが私のスタート地点だった。



 まなかさんに出会って、振られて、今、ここに至るまでの。



 ずっとずっとみっともない、柴咲 深想乃っていう人間の。




 そんなのが始まりだった。



 




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