おわりに
「これって私だけ?」
そう思って書き出したこの体験談ですが、本当はそんなに「特別な出来事」だとは思ってはいません。
家庭環境で辛い思いをする子供は日本中に数えきれないほどいるはずですし、子供時代にパニック発作を発症することも珍しいことではないのかもしれないという思いがあります。
けれど、物心つく前から闘ってきた、苦しんで葛藤した長い日々を、目をそらさずに書こうと初めて思えた一瞬がありました。
それが前項「インナーチャイルドを癒すとは?」で書いた涙が止まった一瞬です。
その一瞬で今までの痛みがすべて癒されたわけではなく、未だに終わらない葛藤は残り続けています。
でも、不思議とストン、と心に落ちるものがありました。
「パニック発作を発症した自分」に劣等感を抱き続けていたけれど、少しは、自分なりに乗り越えた日々を誇ってもいいのかもしれない。
そう思えての、今があります。
誰もが心の中に癒されないままの「内なる子供」がいると思います。
みんな、「内なる子供」のモヤモヤを抱えて、それでも必死で生きている……。
だから大人になってからその痛みに気づいたとしても、なかなか声をあげられませんよね。
大人になれば我慢するのが当たり前。
こころの痛みを訴えることはそう簡単なことではありません。
今のコロナ禍が続く世の中ではなおさら、こころの痛みを訴えることの難しさを感じます。
人との距離を取らなければいけない世の中では、これだけ発達したSNSも役に立たないのかもしれません。
2020年は、新型コロナウイルスの影響で悲しいニュースが重なり、こころを痛めた方が沢山いたと思います。
コロナ禍で人との絆や繋がりが希薄になりがちな今、「こころを保つ」ことがより重要になってきている。本当にそう感じます。
「こころを保つ」とは「自分を愛すること」なのではないかと、思うのです。
私はずっと抱いてきた生き辛さをどうにか解消したくて自分の中でもがき続けた結果、「インナーチャイルドを癒す=私自身を掬い上げたい」と思い至るようになりました。
「掬い上げる」とは「救う」と同義語です。
私がそう思えるようになったきっかけは、世界的アイドルグループBTSのリーダーRMさんが数年前の国連総会で語った「本当の愛は自分を愛することから始まる」という言葉です。
たまたまネットで見かけた記事でしたが、ハッとした私の心にすごく沁みた言葉でした。
当たり前のことだけど「自分を愛する」ことを長年忘れていたような、ガツン!と気づかされた感覚があったんです。
それが私の「自分を愛すること」を考え始める、最初の始まりでした。
実は、この「終わりに」を書いている途中で、改めて色々と調べた結果、初めて「限局性恐怖症」という言葉を知りました。
「限局性恐怖症」とは、特定の状況、物に対して不安や恐怖を強く感じる一種の不安障害で、他の不安障害疾患と比較して、幼少期から発症しやすいものとのこと。
何十年と慢性的に経過しやすいことや、パニック発作など他の精神疾患も合併しやすい点があげられ、幼少期発症の場合は成人までに自然寛解する可能性が高いのだそうです。
もしかしたら、ですが、私の場合「限局性恐怖症」と併発してパニック発作を起こしていたかもしれない……。
今はそう考えています。
「高所恐怖症」「閉所恐怖症」などの恐怖症が有名ですが、私の場合は恐怖の対象が「夜」だったのかもしれません。
大人になって思い返してみた時、ずっと夜にパニック発作が起こることが不思議だったんです。
不思議だったことに、名前がつくだけで少しだけ、納得できる自分がいます。
「自分を愛すること」の一環として書き始めたこの体験談でしたが、自分が思っているよりももの凄く大変で、メンタルが悲鳴をあげることが何度もありました。
自分の過去のトラウマや苦しい思い出は、簡単に当時の自分を引き寄せてしまうんです。
当時の苦しさ、理解してもらえない悲しみ、得体の知れない恐ろしさを思い出すと「こんなに長い間苦しむくらいならもっと大人に相談すればよかった」なんて今更ながら思ったり……。
過去を振り返る辛さを感じる度、書き始めたことを後悔したものです。
けれど、今までひたすら目を背けてきたことを、今からでも、少しずつゆっくりと、ほぐしていきたい、そう思えるようになりました。
「トラウマを書く」ことは苦難の道のりでしたが、どうにか乗り越えたい思いで書き続け……今ではここまで書けたことに勝手な自己満足を感じています。
私は「人の心の痛みは、その人にしかわからない」と思っています。
超能力でもない限り、心の痛みそのままを、他人の心のなかに投影することはできないからです。
けれど、理解はできなくても、痛みに寄り添うことはできる。
大事な人の手を取って、温めることはできるはずだと思っています。
他の誰でもない、私が私自身を掬い上げる。
それは「自分を愛すること」に繋がっていく。
コロナ禍で、そばに寄り添えないことが多い今だからこそ、沢山の方に伝えたいメッセージです。
そして今、パニック発作を抱えている方にささやかなエールを送りたいと思います。
正直、こじらせまくった私の体験談はまったくの参考にならないかもしれません。
その場合はこれを反面教師として、何かしらのヒントに繋げてもらえたら嬉しく思います。
これって私だけ?~子供時代のパニック~ 京呼 @mimubzlove69
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