第2話 立ちつくし
まあ、最近はネットで何でもできるからさ、こういうサービスを利用することもとんと減ったね。わざわざ、アイツんとこに行ってヤるなんて面倒なことしなくてもいいんだけどさ。ま、出すとスッキリするからね。
アイツはさ、大体いつもおんなじとこに立ってる。口をポカンって開けて、物欲しげに。赤い服なんて目立つもの着てさ。
年末に近づくと、金が欲しいのか何なのか分かんねえけど、ちょっと様子が変わってさ。
「ねえ。あなたのモノは特別だから、こっちの口にちょうだいよ」
こんな風に、積極的に誘ってくるわけ。まあ、それはさ、言われたらそうするよね。こっちは出すもん出せればなんでもいいわけだから。
んでさ、いざって思ったら、アイツは
「……ゴム、用意してるから自分で付けてよ」なんて、しおらしく言ってくるのよ。
うっせえなぁ。これくらいいいじゃねーか、無くたって強引にやっちゃえばいけるって思うんだけどね。まあ、俺は紳士だからさ。一応従っとくわけ。後から手間取らせないための、最低限のマナーよ。
事は一瞬で済んで、アイツはあっさり俺のものをのみ込んで、俺は至極スッキリして。いわゆる賢者モードってやつ。
え? その後なんかあんのかって?? いんや、そんだけよ。金ははじめに払ってあるから、べつに特別なやり取りはないね。はい、サヨナラって感じ。
帰りがてら振り返ると、あいつはもう俺のことなんか見てないのさ。寒い寒い道の脇で、また別のやつに口を開いてる。もっともっとくれってさ。軽薄なやつさ、誰でもかまやしないんだ。
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年の瀬に、ポストに年賀状を出しにいくだけの話です。
偽視短話集 コノハナ ヨル @KONOHANA_YORU
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