ジャスティスデイズ
美作美琴
エピソード0 正義のミカタ。
「ヒイイッ……!!」
破けたシャツ、泥まみれのズボンも気にせずに河原沿いの土手を必死に走る男。
目からは涙、口からは一筋の血が滴っている。
男は走りながらも何度も頻りに航法を気にし振り返る。
その脅えようはまるで何かから逃げている様だ。
「ゼェ……ゼェ……ゼェ……」
気道が張り付いたかのように息苦しくなり堪らず足を止める男。
丁度目の前にあった車止めに手を突き呼吸を整える。
「……もう逃げないのか?」
グロッキーなその男の前にある人物が立ち塞がった。
その人物は全身をレオタード生地に似た身体にフィットするスーツを着ており頭には角と言うかアンテナと言うか派手な装飾の付いたフルフェイスのヘルメットを被っている。
ありきたりに言えば子供向け特撮番組に出て来るヒーローと形容すれば分かり安いだろうか。
「何なんだよお前は!? 何で俺がこんな目に遭わなけりゃなんねぇんだよ!!」
どうやら男の着衣の乱れは傷はこの特撮ヒーロー風の男にやられたものの様だ。
「……自覚が無いとはな、お前は他者の
「はぁ!? まさか俺が子猫を段ボール箱に入れて河原にしてた事を言っているのか!?」
「無論」
「ふざけんな!! 猫の命と人間である俺の命とどっちが大事だと思ってんだ!!」
男のその言葉を聞いた途端、ヒーロー風の男の右拳が目にも止まらぬ速さで男の左頬を捉える。
「がはぁっ……!!」
軽く十数メートルは飛ばされる男。
錐揉みしながら地面に落下する。
「愚か者め!!
拳を握り締め咆哮するヒーロー風の男。
その拳は怒りに震えていた。
「魂は生まれてくる境遇を選べない、たまたま人間に生まれて来れた事に何の疑問も抱かずに動物を慈しめないお前には今の生を生きる資格なし!!」
ヒーロー風の男がダッシュ後、高々とジャンプする。
そしてそのまま地面に倒れている男に向かって足先から落下した。
「ぎゃあああああっ!!」
男は腹を踏みつけられ盛大に吐血をし断末魔を上げて息絶えた。
「成敗完了……」
ヒーロー風の男は踏みつけた男から飛び退き腕組みをして遠くを見つめる。
その後彼は河原へと降りていき一つの段ボール箱を拾い上げる。
「ニャアニャアニャア」
中には五匹の子猫が入っていた。
まだ目は開いておらず生まれたばかりの様だ。
「うむ、無事で良かったな子猫たち……今や動物性たんぱく質は貴重品、お前たちの命、無駄にはしない」
ヒーロー風の男は段ボール箱を小脇に抱え何処ともなく去っていった。
河原は既に夕日に包まれていた。
時は20××年……某国家の暴走により地球上が戦乱に飲み込まれる。
第三次世界大戦の勃発である。
核兵器は勿論、致死性の高い細菌兵器の使用により大地は急激に蝕まれ地球の人口は約10億人にまで減少していた。
荒廃した世界に戦争の勝者も敗者も存在せず、ただ人々の精神は擦り減らされて行き、強盗、略奪、暴行などが横行し警察組織などは全く機能していなかった。
しかしそこにあるカテゴリーの人間が現れる。
【
衰退した警察組織に変わり各々独自の正義感に基づき正義を執行する常人を遥かに凌駕する能力を持った者たち。
これはそんな自称ヒーローたちが活躍する混沌とした未来のお話し。
ジャスティスデイズ 美作美琴 @mikoto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ジャスティスデイズの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます