1・6 2019年某日その2

『えっと……気を取り直しまして、続いての質問良いですか?』


『はい、どうぞ』


『あ、これは新郎のご友人からです。「結婚に親御さんは反対されなかったのですか?」……いかがですか? 新郎さん』


『あー実は昔からおじさん……、お義父さんからは、夏と結婚してくれと頼まれてたんですよ。「お前が嫁にもらってくれないか?」とか、「夏と結婚してやってくれ」とか、「夏じゃダメか?」とか。中学生くらいからずっと。だから夏と交際を始めた時、反対されずむしろ大歓迎されました。というか「やっとお前ら付き合ったのか」ってみんなから言われました』 


『え!? お父さんからそんなに何回も頼まれてたの!?』


『そうだよ。もはや暗示かけられてるみたいだった。それでね、みなさん聞いてください。付き合って何年かしたらプロポーズして、それから親御さんに結婚の許しを得るじゃないですか普通は。でも俺たちの場合、付き合った途端に「いつ結婚するんだ?」とか「まだ結婚しないのか」って常にお義父さんからも母からも急かされてたんですよ。もう親が一番ノリノリでしたね。なんか親同士で式場のパンフレットとか見始めてたし、母なんて勝手にゼクシィ買ってました。プロポーズする前からお義父さんにおすすめの式場とかプランとか紹介されたこともあったな』


『えっ、そうだったの!? お父さんどういうこと! そんなことやってたの!?』


『そうだぞお前! お前をもらってくれる男なんてそうそういないからな。絶対に逃すまいと、俺が唾つけてやったんだ! 感謝しやがれ』


『はあ!? お父さん何勝手なことしてんの!? 信じらんない』


『勝手ってなんだよ! 娘のためを思ってのことだろ!』


『そんな圧力かけなくたっていいでしょ! なんで親が勝手に式場決めようとするの! そんなに外堀から埋めるようなことして! まるでこの人が私と情けで結婚したみたいじゃん!』


『情けだろ! じゃなきゃこんないい男がお前と結婚してくれるわけない!』


『はあああ!?』


『落ち着いてください! 新郎さんの次はお父様と喧嘩ですか!? ほらお前ボケッとしてないで、止めろよ!』


『あーまたか……。夏! 暴れるなよ! 落ち着け! 母さんも止めてよ! ちょっと木田! カメラ止めて! もー。昔からいっつもこうなんだから』

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