第1章 BACK TO THE PAST
1・1 2019年某日その1
『えー……じゃあこれからインタビューを始めたいと思います。こちら結婚披露宴の記念ムービー用ということで、友人代表のわたくし、木田がお二人にいろいろとお聞きします。どうぞよろしく。このインタビューはのちのちいい感じに編集して当日流しますので、お二人さんは気を引き締めてください。あれ、カメラ回ってるよね?……あ、大丈夫だ』
『いいから早く始めようよ。時間ないんだから』
『あ、はい。すみません。新婦さんは相変わらずせっかちですね。まったく……じゃあ始めますね。えー、式の参加者にはお二人のことを詳しく知らない方もたくさんいらっしゃると思いますので、「今更こんなこと聞くな」とか言わずに、ちゃんとお答えくださいね』
『分かったら。早く始めなさいよ。時間無くなるよ?』
『はいはい。えーではまず、お二人の出会いは? 馴れ初めをお願いします』
『え!? そこから話すの!?』
『いいから静かに。詳しくは知らない人もいるんだからさ、俺が話すよ』
『あっそ。じゃああんたが話しな。あ、余計なことは言わないでよね』
『分かってるよ。えっと、なんだっけ? 馴れ初めだっけか。えー、俺たちはいわゆる幼馴染です。家が近所で、小さい頃はほぼ毎日遊んでました。ずっと一緒だったと言ってもいいほどです。初めて会ったのは確か……1996年かな。母の実家に引っ越してきたんですけど、隣の家に住んでいたのが彼女でした』
『新郎さんご回答ありがとうございます。お二人はではお隣同士だったということで。いやー、幼馴染が夫婦になるなんてマンガみたいで素敵ですねえ。もう幼い時からお互いが好きだったんですか? ずっと恋愛対象として意識してたとか?』
『俺は……そうですね。物心ついた時から彼女が好きでした。いつからかははっきり分からないですけど、気が付いたら好きでした。彼女はそうじゃなかったみたいだけど』
『なにその言い方』
『まあまあ。えと、新婦さんは幼い頃はあまり新郎さんのことを恋愛対象として意識していなかったんですか? 幼馴染としか見てなかった感じでしょうか?』
『そうですね……ずっと幼馴染として一緒にいたので、恋愛感情なんて全然ありませんでした。ただ純粋に、仲のいい幼馴染としか見てなかったです。というか、ほぼ家族みたいな感覚でした』
『そうだったんですね。でもこうしてめでたく夫婦になるとは。人生何が起きるか分からないもんですねえ』
『ほんと。今でもこの状況が信じられないですもん。昔の私が知ったらきっと驚くと思います』
『俺も驚くだろうな。あの頃、結婚とか何も想像してなかったけど、この状況を知ったらひっくり返ると思う』
『ひっくり返るってどういうこと?』
『あ、いや、何でもない』
『あのー次の質問に進んでもよろしいですか?』
『あ、はい。どうぞ』
『では続いて、お二人のご友人から募集した質問をしたいと思います。えっと……新婦の高校の同級生……一応お名前は伏せておきましょう。Aさんからの質問です。「ズバリ、ファーストキスはいつですか?」じゃあ、新婦さんお答えください!』
『え、私? てか誰この質問したの! まったく……えっと……あんま答えたくないんだけど……いつだっけ? 高校生の時だったよね?』
『違うよ、子どもの頃しただろ』
『え、あ、そうだった。でもそんなのキスに入るの? 子どもの時の話でしょ?』
『じゃあ、一応お伺いします』
『え、聞くの? えっと……確か私が5歳の時だっけ。この人が一方的にしてきたんですよ。私は嫌だったのに』
『一方的って……そんな言い方ないだろ』
『事実でしょ? 私は決して同意してないからね。あんたが勝手にしてきたんじゃない』
『お二人さん、喧嘩はやめてくださいね。落ち着いて、仲良くね』
『この人、未だに根に持ってるんですよ。俺が強引にキスしちゃったから。でも、子どものしたことですよ。20年以上前の話だし、もう時効でしょ?』
『時効なんかないから! 小さい時にあんたに無理やりキスされたせいでトラウマになったんだよ!? 恋愛ドラマとかまともに見られなかったんだから!』
『トラウマ!? 嘘だね! 恋空もイケパラも花男も月9もなんでも好き好んで見てただろ! あぁ、冬ソナとかも見てたよなぁ! まったく、よくもまあ飽きずにあんな恋愛ものばっか見てられるもんだ』
『はあ!? 何その態度! 少しは反省したら? それに高校生の時もいきなりしてきたでしょ! 再犯だ再犯!』
『それに関してはごめんって! でも結果的に両思いになったんだからいいだろ!』
『結果論でしょ! その時は急にキスされて怖かったんだから!』
『だからこうして結婚して責任取っただろ!』
『なにそれ!? もっとマシな言い方ないわけ!?』
『お二人さん落ち着いて! カメラ回ってますよ! 当日流す映像ですよ! こんなの流せないでしょ! まったく……そういうとこは昔から変わってないな、二人とも』
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