4話 夢を追うに正しい道は?


流石にいかがわしいリクエストラッシュは抜けていたけど、

なんというか…3Dモデルに言わせたら可愛いというか、萌えそうなセリフをガンガンとリクエストされていた。



「すごいね、あの子普段もぶりっ子っぽいところあるけど、

ネットだと、それを惜しみなく全面に出してるじゃん」



実咲はケチをつけながら動画を見る。



「多分、戦略でやってるだけで、素ではないんじゃないかな…」



そう思いたい。


ここまで色々言われてるけど、別に天莉は悪い子というわけではない。

ちょっとあざといのはあるかもしれないけど…。



「数秒しか見てないけど、これで50万人か…チョロいね。」


「それは他のVTuberさんを敵に回すんじゃないかな?」


「いや、そういう意味じゃないよ!

私だって『ヒカチャン社長』とか、好きなVTuberさんいるし。

そうじゃなくて、天莉のチャンネルの話。」


「この内容で100万人とかいけるの?」



確かに今見てる動画は、ただただ頼まれたセリフを萌え声で読んでいるだけ。

単調と言えば単調だし、企画として成り立っているのかといえば微妙だし

飽きる飽きないで言えば飽きそうな気はする。


でも、視聴者数もチャットのコメント数もかなりの多さだ。

実際人気があるにはあるんだと思う



「本人も声優目指して…って公言してるみたいだし、

練習にはなってるんじゃないかな…コンセプトは間違ってないよ。」


「実際声は可愛いし…モデルも可愛いの選んでるからさ、

可愛い女の子聞きたい人にはいいチャンネルかもね」



それに他の動画のサムネ見ると、全部が悪いわけじゃなさそうだ

『お悩み相談』とか『ゲーム実況』とか『寝る前のナイショバナシ』とか。


興味ある人にはありそうだ。


それでも実咲はまだ動画についてあれこれ口を挟む。



「…でも、セリフの棒読み具合すごいね…」



確かに言いたいことはわかる。

可愛い萌え声は出ているし、だからこそ可愛いとかは言われているけど、

実力に伴っているかと言われれば微妙だ。


それに対して知結はさっぱりしたもので



「なんだかんだ素人だしね。

スクール入ってから技術磨く人もいるみたいだし、そこはいいんじゃない?」



あくまで冷静に答えた。



「あくまで親に才能証明するためならいいんじゃない?

集客力に関してはある意味証明できてるでしょ。

とはいえ、演劇部入ってスキル磨くのもいいとは思うんだけどね…」



そういってつぶやくと、食い入るように画面を見る。

不満ばっか言ってる実咲対して知結は動画に興味津々だった。


と言っても、天莉が気になるわけではなく…



「このモデルすごいね、表情とか動きがすごい細かい…

なんか萌えを追求してるね。」



3Dモデルの方らしい。

彼女はPCとかCGとか好きらしいから、そこの部分が気になるらしい。



「なるほどね、もちろん本人の動きや表情とモデルはリンクしてるんだろうけど、

その微妙な表情も読み取って細部まで表現をしつつ、

アニメっぽい表情に近くなるように自動修正してるんだ…最近の技術すごいな」



言ってる意味はわからない。


とりあえず、アニメ好きな人が大好きな要素が全部詰まっているらしく、

声がいいとか、面白いことができるとか、特徴ある人がこのモデルを使えば、

人気が出るのもわかる、というのが知結の見解だった。



「なーんだ、じゃあアプリ後からじゃん、天莉の力じゃないね。」



少し嬉しそうにいう実咲。

そしてその顔のまま私の方に顔を向けると



「真由美も声優志望でしょ?やってみなよ!

天莉にもできたなら真由美にもできるよ!」



と呼びかける。


天莉といい、実咲といい、声優目指すならやるべきだってすごい押してくれるけど…

やっぱどうしてだろう…



「うーん…なんか今は乗り気になれないんだよね」


「どうして?」



どうして…と言われても…私にだってなんでかわからない。

でも、強いていうなら天莉の動画をみて思うのは

やっぱぶりっ子しないとダメなのかなって考えてしまう。


否定はしないけど、私はしたくないかなぁ…って。


あとは…なんだろう。



「私…声可愛くないし…自信ない。」


「声優目指しててよくそんなこと言えたね」



私の弱音を聞いて、知結は背中をポンと叩く。

別に、可愛い声じゃないとだめってわけじゃないのはわかるんだけど…



そうしてああだこうだ言っている間に、結構時間が過ぎたのだろう。



「お疲れでーす」



後輩の一年生や委員会を終えた同級生たちが、ゾロゾロと部室に入ってきた。



「あ、そろそろみんな集まる時間か。」


「いけない!

もう3年生引退して私たちがトップなんだから、ちゃんとしないと示しがつかないよ!」



時間を忘れていた私たちは、慌てて荷物を所定の位置に置き着替えの準備をする。



「ほら、さっさと片付けてトレーニングするよ」



こうして私たちは今日も部活を始めるのだった。

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私、VTuber。〜二次元の存在です〜 つきがし ちの @snowoman

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