第9話 1万円


           ※




 「4組の夜川さんって先輩の妹さんですよね?」

 「え、何で知ってるんだ?」

 「み、名字が同じだからそうなのかなって……」


 しまった!当たり前だけど俺と揚羽って兄妹だから名字一緒なのか!

 これじゃ他の人にばれるのも時間の問題か。


 「まあ、一応兄妹だよ」

 「よかった。私、男の子の兄弟いないから、この催眠術試せなくて困ってたんです。あの、協力してくれますか?」

 「俺はいいけど、問題はあいつが協力してくれるかどうかなんだよなあ」


           ※


 部活を終えて家に着いた俺はベッドに横になりながらさっきの出来事を思い出す。


 「如月さんのために一肌脱ぐか」


 財布の中から取り出した1万円とオカルト大百科を持った俺は、階段を下りてリビングへと向かう。


 「なあ揚羽、少しいいか?」

 「……何?」


 ソファーでスマホゲームをしていたからか、揚羽は不機嫌そうな顔でこちらを見る。


 「私下心まる見えの男たちに部活の勧誘されまくって疲れてるんだけど」


 こいつも如月さん同様、たくさんのキャプテンに絡まれたらしい。


 「で、どう対応したんだよ」

 「剣道部のキャプテン以外は全員ガン無視してやったわ」

 「剣道部のキャプテンは?」

 「一番しつこかったからキンタマを蹴ってきたわよ」


 明正、俺の妹が本当にすまん。


 「なんかすごい嬉しそうだったけど」


 前言撤回。一生蹴られとけ。


 「まあそれは置いといて俺の話を聞いてくれ。実は俺オカルト部でさ、試したいオカルトがあるんだけど……」

 「却下」

 「1万円で協力してくれないか?」

 「……分かったわ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【「私、兄貴のこと嫌いだから」→「お兄ちゃん、大好き!」~俺のことが嫌いな妹が催眠術でブラコンになった件~】 青葉 @alloftheworld

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ