第580話 飲み込む

「自分以外の《オリジン》を全て滅ぼす? それって……」


 もしかして、いや、もしかしなくても《オリジン》という立場は危険極まりないのか?

 今のところ、恩恵しか受けてこなかったというか……いや、そうでもないか。

 迷宮入ったら特別な魔物が出てきて酷い目に遭ったことは何度かあるわけだし。

 ただ、他の《オリジン》にどうこう、というのは考えたことがなかった。

 まだ俺以外に、地球に《オリジン》がいるのかどうか分からないからだ。

 一応、梓さんがいるが、あの人はなんというか……大勢に影響がないように動いている節がある。

 自分の物語は終わったみたいな、そんな感じというか。上手く言えないけど。

 俺の言葉に、ワスプは言う。


「僕たちの中にも《蟲王》以外の《オリジン》はいたんだ。三人ほどね。でも、《蟲王》と違って他の種族との融和を考えていたから……あとはぶつかり合うしかなくて、結局、苛烈な考えと実力を持つ《蟲王》にやられてしまったよ。僕らの支族も《蟲王》側ではなかったんだけど、そうなってしまったらもう逆らえない。力をつけた《オリジン》に敵う存在は、《オリジン》だけだ」


「……もしかして、《蟲王》を倒すには創が頑張るしかない……?」


 雹菜が少し考えてからそう言った。

 ワスプはこれに頷いて言う。


「最終的にはそうだね。別にダメージが入らないとかじゃないんだ。普通に攻撃は効くし、瀕死にまでは頑張れば持っていけると思うよ。でも最後には《オリジン》の力を奪い取る必要がある。それによって、世界の権利が委譲される。《オリジン》の権能は、その世界の権利の欠片だから」


「世界の権利の欠片……世界の権利ってなんだよ」


「その世界の行末を決める最終的な決定権さ。君も聞いたことがあるんじゃないかな? システムから、《オリジン》だけに対するアナウンスを。とは言っても、あれはハイエルフが勝手にそういうシステムにしただけで、本当はそういう親切さはなくて自然に権能が与えられて、自分で気づくしかないらしいけど。便利だけど厄介なことをしたものだよね」


「そもそもハイエルフってなんなんだ。エルフとは違うって話だったが」


「ハイエルフはハイエルフさ。神々から作られた……亜神とか天使とか、そんな呼ばれ方をすることもある。神々はもうほとんど去ってしまったらしいから、置いてかれた彼らがどうにか維持してるらしいよ。これも《蟲王》の話によればだけど」


 神々が去った?

 だが、俺は以前、神を名乗る存在と話した記憶が……あれはハイエルフだったのか?

 それとも……。

 いや、今はそれより……。


「なぜ《蟲王》はそんなにいろいろなことを知ってるんだ? 蟲族の王様とかで口伝とかがされてるのか?」


「そういうわけじゃない。《蟲王》は他の世界の《オリジン》すら飲み込んだことがある。だからそこから知識を……あれ? 《蟲王》は一体どの世界の《オリジン》を飲み込んだんだろ? 思い出せないな……記憶が……痛っ…。」


 ワスプは頭を抱える。

 それから痛がったので、


「おい、大丈夫か?」


「う、うん……なんだろう? なんだか急に……」


 *****


 あとがきです。

 昨日はちょっと調子悪くて書けず申し訳なかったです。

 概ね治ったので再開します。

 これからも頑張るのでどうぞよろしくお願いします。

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