第579話 《オリジン》の選ぶもの
「《種族選択》と《種族進化》の項目が《ステータスプレート》に現れた時、他の種族を選ぶとどういう場合にせよ、能力値が上がることについて、私たち人類は最弱の種族なんじゃないか、みたいな話があったけど、そもそもそこが私たちの強みじゃなかったってこと?」
雹菜がそう言った。
これに俺もワスプの話を聴いて思ったことを言う。
「ワスプが言うことを信じるなら……まぁ別に疑う理由なんて全然ないけど……俺たちは《種族選択》が存在している時点でそれが強みってことみたいだな。他の種族にはないのか?
するとワスプは少し考えて答える。
「絶対にない、とは言えないよ。たまに《種族選択》を持つ者も、各種族に現れたりする。でも滅多にないからね。それに、それが現れても大体は選ばないんだ」
「なぜ?」
「異物になってしまうからだよ。たとえば、僕たち《蟲族》は《蟲族》で纏まってるわけで……そこに突然、種族選択で他の種族になった者が現れても、阻害されてしまう確率の方が高いね」
差別か……まぁどこにでもある話か。
こんな色々な種族があっても、そういうことは結局起こると。
ワスプは続けた。
「だからこそ、君たちの在り方は非常に面白いね。創の話を聞く限り、君たちはみんな、元は普人族だったわけでしょう? でも今は色々な種族を選択して変化してる。それでいて、仲が悪そうな様子もないし……」
確かにそれはそうだな。
俺たちからすると、別に蜥蜴人がいようがゴブリンがいようがもはや気にならない。
普通にみんな街中歩いていても、まぁ多少珍しいもの扱いはされるが、差別されるみたいなことはない。
そもそも《種族選択》するようなのは冒険者ばかりなので、喧嘩ふっかけると危険すぎるというのもあるかもしれないが、遠巻きにどうこう言われるってことすらないからな。
一緒に写真を撮ってくれ、とか頼まれる程度だ。
特に日本はそういうのが顕著である。
外国では多少、衝突もあるらしいが……。
それを考えると、日本が特に特殊なのかもしれないな。
そう思った俺は言う。
「俺たちはこういう、別種族が共存するみたいな雰囲気には慣れがあるからな。そこまで忌避感がないんだ」
ゲームとかで普通に見てきた光景だから。
今でも普通にゲームで色々な種族が出てきて、なんていうのは普通だ。
現実をテーマにした作品にも出てきてしまうようになってるのは面白い変化だが。
「そういうのは中々ないね。世界は様々あれど、大体は自分たちの種族の生存を賭けてみんな戦っている。一緒に、なんて……」
「生存を賭ける、か。そもそも何で《蟲族》は蜥蜴人と戦ってるんだ? 普通に仲良くするとか出来ないのか?」
「さっきも言ったけど、それは難しいんだよ。特に《オリジン》である《蟲王》にそのつもりがない。僕たちの種族に、《オリジン》は一人だけしかいないから……他は皆、殺されてしまった」
「それってどういう……」
「世界の行く末を決めるのは、《オリジン》の選択なんだってさ。だから《蟲王》は自分以外の《オリジン》全てを滅ぼしたんだ。そういう話だよ」
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