第578話 可能性
「なんだかとんでもない話をしているが……」
俺がそう呟くと、雹奈も深刻そうな表情で呟く。
「この情報、どう扱ったらいいものか……。いずれも重要な話だから、うちだけで抱え込むというのもね。そうしたところで利益があるとかそういうことでもないし」
金鉱脈がここにある、とか重要なアイテムがここに、とかそういう情報とは根本的に意味合いが違う。
なぜ、こんな世界になってしまったのか、これから世界はどうしていくべきか。
そういう人類全てが抱いている疑問に対して指針を与えるものに他ならない。
隠すべきではないだろう。
「まぁ、おいおい考えていくしかないな。賀東さん相良さんあたりには先に話してもいいかもしれないが」
「そうね。信用できる人たちと相談して、徐々にって感じかしら。総理や大臣にも連絡できるわけだし」
「あぁ。で、続きというか、さっきの疑問については……」
「あぁ、そうだったわ。ええと、契約が知能の低い蟲馬なんかには効きにくいって話だったわね。テイムしたらいいとかも」
これにワスプは答える。
「《原契約》は基本的に魂そのものを縛るための契約なんだ。ただ、魂には格というものがあってね。それが低いと、大して効かないというか……細かい命令を認識出来るだけの性能がないんだよね。知能の高い存在は、魂の格も高いことが多い。と言っても、こうやって会話が出来るほどの知能があれば、あとはまた別の部分で魂の格が異なってくるんだけど」
「別の部分って何かしら?」
「それはほら、ステータスだよ。ステータスが強力であればあるほど、魂の格が高いってことさ。あとは……種族も関係してくるかな。蜥蜴人よりも龍人の方が魂の格が高い、みたいにね。まぁそもそもその二つを比べるなら、ステータスそのものも大きく異なってくるけど、それでもステータスの高い蜥蜴人よりもステータスの低い龍人の方が魂の格が高いね。そのあたりは色々な要素が関わってくるから、難しい部分なんだけど」
「なるほど……ちなみに、私たちと、あなた
「《魔人》と《蟲族》だったら同じくらいじゃないかな?」
そういえば俺たちは魔人系の種族だったな。
ツノあるし。
そうだった、という表情で雹奈は質問を変える。
「ええと、普通の人族だったらどう? ええと……あの辺にいるような人たちとか」
そう言って、全線基地内にいる種族を変えていない冒険者を指差して尋ねた。
ワスプはそれ見て頷き、
「普人族ね。普人族と僕たちだったら、まぁ僕たちの方が上かな? でも大きな差じゃないね。ステータスがある程度上がれば普人族の方が上になることもある。普人族は可能性が他の種族よりも大きいっていうのもあるから、なんとも言えないな」
「可能性?」
「種族進化以外に、種族変更が可能なことだよ。僕たちは基本的に進化しか出来ない。しかも、相当な鍛え上げないと難しい。滅多にいないな。でも普人族は結構簡単に種族を変更する事ができちゃうからね。進化の方は難しいと思うけど」
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