第577話 システム
雹菜の質問にワスプは答える。
「《蟲王》のする《契約》は《オリジン》の力に基づく《原契約》だから、知能が低い存在にはあんまり強く働かないんだよ。それでも指示は十分に聞かせられるし、さらにその上にテイム系のスキル持ちが《テイム》すればそれで問題ないんだけどね。でも今回はたくさんの砦を攻める関係で、《テイム》してない《蟲馬》もたくさん出してるからなぁ……」
このワスプの話は、かなり重要な情報がたくさん含まれている。
雹菜はさらに突っ込んで尋ねていく。
もちろん周囲に人がいないことを確認してだ。
ただ、こうなってくるともはや《オリジン》という存在について隠すというのは難しいな。
これから、そういうものがいる、としっかり共有する必要が出てくる。
俺が《オリジン》であるかどうかを公表するかはまた別の話だが、少なくとも敵の首魁がそういう存在であることを知っておいた方が、生存率も上がるだろう。
「《原契約》というのは、何? それになぜ知能が低いと強く働かないの? そして、さらに《テイム》をすれば問題ないっていうのは……」
まぁ確かに大事なのはその辺りか。
《蟲王》について、も気になるが、それは後回しということかな。
とりあえず、《オリジン》そのものとそれに関係あることを聞こうという判断か。
「うーん、一気に聞かれるとどれから答えるか迷っちゃうけど、一つずつ答えていくね」
「ええ、気が急いて申し訳ないけど……」
「ううん、いいよ。ええと、まずは《原契約》についてなんだけど、これは今回は《オリジン》の力、地位に基づいた《契約》のことなんだけど……簡単にいうと、スキルやシステムを通さない契約のことだね。だから《オリジン》じゃなくても、特殊な儀式とかでする事も出来るよ。ただそのためには、なんらかの《源力》……魔力とか、蟲気とか、精霊力とか……そういう自然界に元々存在している力を自分の意志と技術で操らないとならないんだ」
「スキルは分かるけど……システム?」
「システムは《ハイエルフ》……あぁ、これはいわゆる《エルフ》と名前も見た目も似ていながら、実のところ全く違う存在なんだけど……彼らが構築した多世界に渡る《源力》管理システムのことだね。どうやって作ったとかは聞かないでよ。僕も知らないから。《迷宮》も《スキル》も《ステータスプレート》も、これによって運用されてるんだ」
これは……驚くべき情報じゃないか?
世界中がどうして《迷宮》や《スキル》、それに《ステータスプレート》なんてものが突然現れたのか、血眼になってその答えを探し求めているのに、ワスプはそれに対する答えをすでに持っている……?
いや、あくまでこれが正しい前提だが……。
「……初めて知ったわ」
「そうなの? まぁこれも、僕たちは《蟲王》に教えてもらっただけなんだけどね。あ、アーツについてはいわゆるシステム外スキルなんだってさ。システムとは関係なく、自分の力だけで実現したスキル。だから仮にこの世から迷宮とかが亡くなっても、そのまま使うことができるんだって。だからこそ希望があるとか言ってたけど、その辺はイマイチどういう意味か僕には分からなかったなぁ……」
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