第571話 復活
魔力を流した後は……。
「……首を普通にくっ付ければいいのか?」
ワスプの頭頂部をバスケットボールのごとく引っ掴みながら尋ねると、ワスプは笑って言った。
「そうそう。それでくっつくからやっちゃって! それにしてもこんな持ち方されるなんてなかなかない経験で面白いねぇ。しばらくこのままでも僕はいいよ」
「俺の方が構うわ。生首手掴みの歩き回るとか……たまに創作物でそんなキャラも見ないじゃないが、それなりの理由あってのアレだからな。やらんやらん」
言いながら、そのまま頭を体にくっつけた。
すると、首の部分と体の部分の接合部が、ズズ、と動き出し、そして完全にくっついてしまった。
マジでくっ付くのか。
と、それを見ながら思う俺。
そしてしばらくすると、カッ、とワスプの目が開く。
「おぉ〜! 繋がった! 復活!」
と嬉しそうに叫び、立ち上がり、そして背中の羽を動かして空中に浮遊し出した。
ここに来て、こいつ逃げるんじゃないか?と一瞬思ったが、ワスプと俺の間にある契約の効果でそんなことはやろうと思っても出来ない、という確信が心の中に湧く。
事実ワスプは、体の動きを少し試した後、地上に降りてきて、
「いい感じだよ。これで僕も一人で動けるようになった。この後どうする? もちろん《蟲族》とか《蟲馬》、それに《蟲兵》たちを倒すんだろうけど、指示をくれるならその方が動きやすいけど?」
と素直に指示を求めてくる。
「てっきり逃げ出しそうと思ったけど、思ったより義理堅かったな」
「だから契約でそんなことは絶対無理なんだって。そもそも、僕は《蟲王》には従いたくなかったしね。無理やり契約でいうこと聞かされてただけ。君に上書きされたから、もうそんな心配はない。そうである以上、むしろ、《蟲王》の駒たちは駆逐対象かな」
思ったよりも《蟲王》とやらに憎しみが募っているらしかった。
「俺としては都合がいいが……家族とか友達とかいるんじゃないのか?」
「僕の支族はそういうの薄いからねぇ……。働き蜂に過ぎない僕みたいなのは、特にさ」
「本当の虫の蜂と同じってことか? いや、失礼かもしれないが……」
「違うところもあるけど、組織的にはね。女王蜂がいて、働き蜂がいて、ってことさ。女王様が《蟲王》に支配されてるから、ついでに僕らもって感じでね。支族によってはまとめて支配されてないのもいる。だけどまぁ、僕はね、そういうことだから全然同族意識とかは希薄かな。他の支族の連中で、さっきまで肩を並べてた奴らの方とがむしろ親しいくらい」
「分かった。まぁ、さっき言ってたが、解放して欲しいやつがいたら言ってくれ。首落とせばお前みたいに契約結べるんだろう?」
「そうそう、それで死なないやつはね。死んじゃう勢は……なんとか動きを止めてくれればって感じ? そこまで面倒臭い場合は残念だけど僕も諦めてもいいし」
「あっさりしてるな」
「戦場だからねぇ、ここ」
「まぁそれは確かに」
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