第567話 情報源として

 まぁ、正直なところ危ないんじゃないか?騙そうとしているんじゃないか?みたいな感覚もある。

 だが、本当にただの生首でしかないこれに何が出来るんだろうか、とも思う。

 首だけになっても動く魔物とかはいなくはないし、こいつももしかしたらそうかもしれないが……少なくともその状態で負けることはないだろう。

 加えて、情報を喋ってくれるというのは正直、ありがたい。

 《蟲族》回りについては現状、あのカブトムシの《蟲族》以外だと、蜥蜴人たちくらいからしか情報を聞けていない上、彼らは《蟲族》についてほとんど何も知らず、いきなり襲いかかってきた奴らだ、ということくらいしか語れない。

 そういう諸々を考えると、こいつに喋るだけ喋ってもらうというのは悪くないはずだ……。

 色々と理由つけたが、こうして多少話してしまうと情が湧くというのもあった。

 何か憎めない雰囲気がある……それすらもある種の擬態なのかもしれないが、問題が起こったら殺せば良い。それだけの話だ。


 そう思って俺は、蜂の《蟲族》の頭を引っつかみ、


「……で、どこから魔力を注げば良い? そもそも注ぎ方は……?」


 と目を合わせて尋ねる。

 嘘は語らせない、という威圧のためもあった。

 そんな俺に蜂の《蟲族》は、


「おー、怖いね。でも大丈夫。僕、裏切らないから……あぁ、裏切りとかそういうの怖いなら、契約という手もあるよ? 僕の行動や存在を縛れる。魔力注ぐついでにやれるし、一石二鳥かも?」


 そんなことを言ってくる。


「契約?」


「うん。あれ、テイム系のスキル持ってないの? アーツでも良いけど」


「お前……」


 スキルやアーツを知っているのか。

 でも、考えてみると、蜥蜴人がスキルを知っていて、教えてくれるわけだし、同じフロアに出現するこいつらも理解していてもおかしくはないか。

 ともあれ、俺は言う。


「……いや、俺は事情があってスキルは身につけられないんだ。アーツならなくはないが、特殊なものしか……」


「お? ということは《オリジン》かな? これはまた貴重な人に拾われたもんだ。でも《オリジン》なら別にスキルなくても契約は出来るし……」


「お前……!?」


 今度はさらに驚く。

 その単語こそ、知っている者はほとんどいないはずだった。

 殺すしかないか……?

 そう思うが、蜂の《蟲族》は目の色が変わった俺に慌てたようにして、


「ちょ、ちょっと待った! え、なんでそんないきなり殺気いっぱいなのさ!? なんか気に障った!?」


 と言ってくる。

 ……?

 こいつにとって《オリジン》という単語そのものの情報は、あまり大したことはないのか?

 なんだろうな、分からない。

 分からないが……こいつは色々なことを知っている可能性が高い。

 情報源として間違いなく優秀だ。

 出来ることなら、長く、多くのことを聞きたい……。

 それを考えると……。


「……まぁ、いい。そういうことなら契約とやらが出来るならしたいんだが。お前に俺のことを喋らせるわけにいかない」

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