第558話 目撃情報
「賀東さん! 改めてですけど……蜥蜴人の姿すごいっすね……」
こう言ったのは慎である。
俺や雹菜はもう完全に見慣れたが、慎はそこまでではないからこその台詞だった。
美佳も同様で、
「かっこいいですけど……尻尾って自分の意思で動くんですか?」
と少しピントのズレたことを聞いている。
賀東さんも賀東さんでだいぶ気のいい人だから、
「いやぁ、俺も朝目覚めて歯を磨こうと鏡に向かうと毎朝驚くぜ! あぁ、これが俺なんだって。でもこれはどんな種族に変化した人間でも同じかもな。顔立ちの変化が大きい魔人系はそこまでではないかも知れねぇが。あと尻尾だが、ほれ。普通に動くぜ。尻尾を使ったスキルも結構あってな。意外に使えるんだ」
そんな風にノリよく答えた。
「尻尾を使ったスキルですか?」
慎が尋ねると、賀東さんは言う。
「あぁ。俺が身につけたのだと《蜥蜴武術》、ってのがあってな。この体の特殊性……尻尾とか鱗の硬さ、耐性なんかをうまく使った武術なんだ。そこそこの魔物までなら素手でも余裕で対応できるから、思った以上にいいぜ。それに、これは他のスキルとも併用できるからな。剣術とか槍術とかと。尻尾は盾代わりにもなるし」
「へぇ……それはいいですね。俺も蜥蜴人、そのうちなるべきかな……今は選択できないけど……」
慎がそう呟いたので、美佳が、
「出来れば他のにしてよ。便利なのも見た目もなんかかっこいいのも分かるけど、デートとか困る」
と言う。
「あぁ、それはな……街中で見かけるとびっくりするか」
これには賀東さんも笑って、
「そういやお前らそういう関係だったな。確かにこの見た目で街歩いてると二度見どころか三度見されるぜ。最近増えてきたって言っても、ここくらいだからな。大抵はここにこもってサブイベント潰しをしてるわけだし、外じゃ中々な」
「ですよね……はぁ、諦めるか」
「それがいいかもな」
それから賀東さんは、
「じゃあ俺はこれからちょっと外に出るから、ここで。頑張れよお前ら」
そう言って手を振り、去っていく。
俺は雹菜に尋ねる。
「何か話を聞けたか?」
彼女がギルドリーダーたちを探していたのは、ここに来ていない間に起こった変化などを聞くためだ。
街の様子を見るにそこまで色々起こってるという感じではなさそうだが……。
「ええ、まぁそこまですごい話はなかったわね。ただ《蟲族》に遭遇したという話は何件かあったわ。幸い、事前情報があったからすぐに逃げたって言う人が大半だったけど。賀東さんと相良さんは倒したらしいけどね」
「えぇ。俺たちは倒し損ねたのに」
「聞いてみると、そこまで強くなかったみたい。《蟲族》にもピンキリがいるんでしょうね……私たちが出遭ったのは、おそらくピンの方でしょう」
「次に遭遇したら絶対に倒したいところだけど……」
そう言って少し考える俺に、雹菜は、
「そううまくはいかないかもね。あの時もどうやって逃げたのかわからないし」
そう言ったのだった。
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