第555話 ステータス
「中々良かったんじゃないか?」
集落内全ての魔物を倒し切った初音に近づきつつ、俺はそう言った。
ついでに周囲にまだ存在している魔物の魔力を操って初音に吸収させていく。
以前は魔力の同化作業に結構な力を使っていたが、もうだいぶ慣れて素材回収の片手間で出来るようになっている。
迷宮の中だから、基本的に解体も必要ないしな。
ただし、一番いい獲物だったオークウォーリアについてだけは解体するが。
迷宮内の魔物は、解体しなければ一定時間で消滅する仕様だ。
誰が定めたのか分からないが、色んな意味で便利だ。
消滅した場合、ドロップアイテムが残る。
オークは肉の部位が多いな。
しかも、そのまま地面に落ちたんじゃ食材にできないからと、妙なシートのようなもので包まれた状態でである。
肉系はそのような配慮が、迷宮によってなされている。
気が利きすぎて人為的な介入を感じざるを得ないが、それを言い出すと《ステータスプレート》を始めとする諸々があるから、今更といえば今更である。
冒険者としては、便利ですねと使っていくしかない。
どういう理由かは学者たちの分析に任せたいところだ。
任せても何も分かってないけどな、実際のところ。
「そう? でももうちょっと早く倒せると思ってた。やっぱり、一人で大物をたくさんやるには、今の私だと腕力が足りない」
初音がそう言った。
それに対して慎が、
「まぁそういうのはすぐに解決するだろうから大丈夫だろ……感じないか? 今、現在進行形で強くなってるのを」
そう言うと、初音は首を傾げる。
これに美佳が、
「《ステータスプレート》を見た方がいいわよ」
と言ったので、初音はその手に《ステータスプレート》を出現させて、ステータスを確認し始めた。
そして目を見開く。
「……スロットみたいに数字が増えてる……」
「面白いだろ?」
慎が揶揄うようにそう言った。
初音と一緒に狩りに行くのは別に初めてではなかったから、魔力の同化についても初めてではないが、やってる途中にステータスを確認させたことはなかったな。
それに色々と慎重を期して、集落クラスに大量の魔物を一度に、と言うのは今回までやってこなかったから、ここまで効率が出ることもなかった。
しかし今回は、と言うわけだ。
「これが、創の力?」
初音が尋ねる。
大雑把にではあるが、俺が出来ることはすでに教えているからこその質問だった。
《オリジン》としての力については、俺も全て理解しきれている訳ではないため、確実に分かっていることを箇条書き的に教えているに過ぎないが、それでもこれについてははっきり俺がやってることだと分かっている。
俺は頷いて答える。
「あぁ、そういうことだな。と言っても、ずっとこの調子でステータスが増えると思うなよ。限界があるんだ。ある程度以上になると、魔力を同化させるのが難しくなっていってな……」
受け取る側……今回で言うと、初音側の魔力が固くなって、外部から操作しにくくなっていくんだよな。
それも俺の器用と精神が上昇するにつれて、限界値も上がってきてはいるのだが、そこまで大幅な上昇というわけではない。
だから最強クラスを促成栽培、みたいな感じのことは出来ない。
才能があるやつを、C級下位クラスまで持ち上げる、くらいが今の限界だな。
しかし初音は言った。
「それでも十分……今日はもうちょっと上げられる?」
「あぁ、もう一つ二つ、集落を潰すくらいのことをすればな。でも疲労は大丈夫か?」
「問題ない。いける」
そう言ったので、俺たちは次の目標を探して迷宮を彷徨う。
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