第551話 集落への潜入
《群の迷宮》……もとい《豚肉の迷宮》に入ったのは、初音のステータス上げのためであるから、可能な限り彼女に多くの魔力を吸収させたい。
そのためには《集落》の中にいる最も強い魔物を彼女に倒させたいところだ。
まぁ、俺が魔力を操ってやれば、そうしなくてもかなり高効率でステータスを上げられはするのだが。
「……まずは初音に初撃を与えてもらって、その後に俺たちが補助に入りつつ、ギリギリまで削る感じがいいかな」
俺はそう言った。
なぜそうするかと言えば、魔物を倒した時の魔力吸収は、ラストアタックを加えた者が最も高くなる傾向があるからだ。
次点で最もダメージを与えた者、になるが、効率を考えるとラストアタックを初音に任せるのが一番いい。
これに慎が、
「俺もそれでいいと思う。ただ問題は、最初に初音に一人で《集落》の中に入ってもらう必要があることだが……俺たちが入ると初撃加える前に確実にバレるからな」
そう言った。
これについてはその通りで、高いレベルで隠密を効かせられるのは初音しかいないからだ。
一応、俺と慎もそれなりの隠密は出来なくはないのだが、敵の数が増え、死角が少なくなるにつれて効きが悪くなっていくものだ。
あのくらいの規模の《集落》ともなると、俺たちレベルだとすぐにバレる。
だからこその台詞だった。
これに初音は、
「大丈夫。私ならバレない」
と胸を張る。
美佳がそんな初音に、
「仮にバレたとしても、私がすぐに術を飛ばすから大丈夫よ。慎と創はその直後に出来る限り早く初音の補助に入ること」
と忠告される。
俺たちはそれに、
「あぁ、もちろんだ」
「あの程度のオークくらいなら俺たちなら普通に肉壁になっても死なないからな。頑張るよ」
そう言った。
そして、
「じゃあ……初音、準備はいいか?」
俺がそう尋ねると彼女は頷いたので、
「よし……じゃああのオークが見えるな? あいつが後ろを向いたら、開始だ……三、二、一……今だ!」
そして初音が飛び出していく。
******
オークの《集落》は円形になっていて、周囲を丸太が柵のように覆っている構造になっている。
俺たちから見える一部分だけが、入り口として機能しているようで開いているが、そこを門番のように見張っているオークが一体いた。
そいつはキョロキョロと周囲を観察していて、一定時間ごとに向きを変えている。
俺がタイミングを取ったのは、そいつが向こう側を向いて背中を向けるその瞬間だった。
初音はその瞬間を見逃さずに、素早く門番オークの元へと近づき、そして背後にたどり着くとその短剣を思い切り振り、その首を狙った。
オークは基本的に頑丈な魔物であり、首を落とすのは意外に難しい。
俺の大剣のような質量のある武器を使えば可能だろうが、初音のそれでは流石に難しかった。
けれど、初音は落とすのではなく、刺すことにより絶命を狙ったようだ。
仮に一撃でそれができなくても、間違いなく致命傷になる一撃……。
そして、初音は賭けに勝った。
オークは悲鳴も上げることも出来ずに、その場に膝から崩れ落ちる。
初音はそのまま、中のオークに気づかれる前に内部へと突っ込んでいく。
俺たちはそれを追いかけた。
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