第537話 お試し
「……家の掃除、薬草採取……下水道の魔物駆除なんてのもあったな」
俺がそう呟くと、
「こっちは店の給事とかお金持ちのお屋敷でのメイドとかがあったわね。ただどれもそれほどの危険はなさそうだったわ。もうすでに受けたサブイベントとかある?」
そう言った。
あれから、俺と雹菜は手分けしてサブイベント探しをした。
当初は一緒に探していたのだが、その人間によって受けられるサブイベントは異なる、と言う話があったから、別々に探した方が色々と発見できるのでは?と思ったのだ。
その結果がこれだった。
やはり、人によって受けられるイベントは違うようだ。
雹菜の方は女性向けという感じがすごいするな。
俺のは男向けの軽作業感がすごい。
ただ、ステータスが参照されてると言う感じはないな。
純粋にその人物の属性……男だとか何歳だとかそういう理由で割り当てられるサブイベントと、ステータスを参照されることによって受けられるサブイベントはまた違った形で存在しているのかもしれない。
そんなことを感がながら、俺は雹菜に言う。
「いや、まだないな。まずは相談してからと思った。雹菜は?」
「私も同じね……じゃあ、早速一つでも受けてみましょうか。でもサブイベントって、一人でいる時に依頼されたものを、二人で行っても同じように受けられるのかしら?」
「確かに。その辺りも一緒に検証してしまおう」
結果として、一度見つけたサブイベントは無くなったりはしなかった。
ただし、一人で行った時とはまた違った条件が付加されるパターンがあった。
たとえば、俺の受けた家の掃除だが、一人の時は一階だけ掃除してくれればいいから、と言われたのだが、二人で行ったら二階も一緒にお願い、と言われてしまったのだ。
まぁ、一人で片付けられる依頼を二人で片付けようとするのは、不正というか、卑怯か?
その辺りの調整が入っているのかもしれない。
そうは言っても、ただの掃除だからそこまで大変ではないのは同じだけど。
「あっ……《掃除》スキルが手に入ってる」
《ステータスプレート》を見ながら雹菜がつぶやいた。
「イベント完了のメッセージと共に、スキルを習得しましたって出たって言ってたけど本当だったんだな」
俺も答えた。
事前の情報通り、イベントをこなすとスキルなどが得られる、と言うのは本当のようだった。
これはかなり楽にスキルを手に入れられる、ということになる。
ただ……。
「……創は? やっぱり……?」
気の毒そうな目で見てくる雹菜の危惧通り、俺は……。
「残念ながら、スキルは手に入らなかったな。イベント完了のメッセージは俺の方にも来たんだけどな……」
そういうことだった。
スキルゼロの冒険者人生は、まだまだ続くらしい。
せめてアーツとして見つけられていて欲しいが、今のところそこに《掃除》の記載はない。
簡単には身につけられないと言うことなのか、そもそも身につけることができないと言うことなのか、それはわからない。
ただ、今のところはそう言う希望があるかもしれないと、期待しておこう。
みんながもらえる報酬が、俺だけ手に入らないなんて、悲しいじゃないか……。
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