第525話 合格祝い

 次の日。

 合格祝いパーティーが開かれることになった。

 初音の家族も別に問題ないということで、全員来ている。

 ちなみにパーティーの場所だが、これは普通に《無色の団》ギルドビルで、と言うことになった。

 今日明日でこの人数の予約の入れられるちょうど良さげな店はなかった、というのと、ギルドの稼ぎからして普通にいいシェフとかそういうのを手配できるから、と雹菜はくながそう言ったからだ。

 事実、テーブルには次々に料理が運ばれてきて、みんな舌鼓を打っていた。

 一体どこから、と言いたくなるかもしれないが、支部ではなく本部の方だから、しっかりとした厨房があるんだよな。

 こう言う時のために。

 まぁ支部の方にも厨房はあるけれども、さすがに何十人もの人間のために料理を作れるような広さではない。

 それでもそれなりに本格的なものなのだが。

 冒険者の趣味というか、手っ取り早くこだわれるのが料理だと言われているから大体のギルドにはそういった厨房があるものだ。

 迷宮に行く時に自分で料理作って持っていく冒険者もかなりいる。

 やっぱり、一度迷宮に入ったら食事だからと一旦外に出るとかそういうわけにもいかないからな。

 けれど保存食じゃ味気ないとか、どうせなら自分の好きなものを、とか、コストがとか色々考えると自分で作るのが一番、ということになるのだった。


「……うまうま」


 初音がそう言って次から次へと料理を腹に入れていく。

 この小ささの割に恐ろしいほど食うのだよな。

 一体どこに入ってるんだ、こいつは……。


「しかし、いい冒険者を勧誘したな、創」


 そう言ったのは、隣に座ってる慎だ。

 なぜだか久しぶりに会ったような気がするが、結構最近すれ違いになりがちだったからだろうな。

 慎は主に美佳と迷宮に潜るし、売り出し中だから多くの迷宮を巡ってる関係でそうそう会えない。

 まぁ、会おうと連絡すればすぐに会えるのだが、お互いに色々立て込んでる時期だからと遠慮しているところがある。

 この辺の感覚は、幼馴染だからお互いによく分かる。


「あぁ、いい出会いだったなと思うよ。それにしても、昇格試験ごとに勧誘してる気がするな、俺」


 俺がそう言うと、慎は確かに、と笑った。


「普通なら試験に受かるために必死で、他人を勧誘してる余裕なんてないはずなんだけどな。創の場合、合格は余裕だからそんなことも出来るんだろうさ」


「余裕って程じゃなかったけどな」


「そうなのか?」


「あぁ、なんだか今回の試験、妙な新技術が使われててさ、それで難しい課題に当たってしまって……」


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