第522話 説明
「……えっ、そ、それが聞きたいこと?」
初音は頷いて、
「うん。雹菜さんには恋人はいないって、こないだ雑誌で読んだ」
そう言った。
ここで言う雑誌というのは冒険者関係の雑誌だな。
結構あって、コンビニとかでも普通に売っている。
あまりにもグロい写真とか載ってるやつは流石に一般書店には回らないが、そうでもないのは普通に一般人も読むからな。
「私に恋人がいない? そんなインタビュー受けたっけ……?」
首を傾げる雹菜。
まぁ別に雹菜はアイドル的な人気があるにしても、本当にアイドルなわけじゃないからな。
恋人いるいないについて嘘をつく必要なんてさらさらない。
特に公言することないのも、そんなことは冒険者の実力などとは全く関係がないからだ。
ただ聞かれれば素直に答える。
そのくらいのものだ。
俺としてはあんまり広く伝えるのは勘弁して欲しいが……周囲の目線とか怖くなりそうだからな。
命を狙われるかもしれない。
それなりの覚悟がないわけじゃないけど、避けられる危険は避けておきたい。
「ううん、インタビューじゃなくて、追跡取材みたいなのに書いてあった」
「追跡取材……? うーん、私なんか追いかけても面白いことないんだけどね」
「使ってる化粧品とか、服のブランドとか……そういうのも書いてあった」
「……何が楽しくてそんなことを書いてるのかしら……?
「私は参考にした」
「……まぁ、楽しんでくれてるなら別にいいわ。で、そんなところに私には恋人がいないって書いてあったと」
「そう」
「でもおかしいわね? 私のこと追いかけてたなら、創とかなり長く一緒にいるところくらい見てると思うんだけど」
「そうなの?」
「ええ。ほぼ一緒に住んでるし……」
「うーん……あっ、確か、マネージャーと一緒にいることが多く、男の影はないだろう、みたいな感じの書き方だった」
「ははぁ……創はマネージャー扱いなのね……。納得したわ。考えてみれば、本当にマネージャーとして動いてもらってることもあるし、その辺を知ってる人が勘違いしたんでしょうね」
確かにそうだな。
しかも付き合う前からそんな感じのことをしていた。
テレビ局にもついて行って……。
その時の俺の行動を知っていれば、一緒にいるところを見ても、あぁ、あのマネージャーねとなるのだろうな。
見た目的に釣り合ってないというか、彼氏だとも思わないんだろう。
「……でも、実際はやっぱり付き合ってる?」
初音がダメ押しに尋ねると、雹菜は頷いて、
「ええ、そうよ」
そう言った。
「おぉ、堂々と……」
「隠す理由もないからね。もしかして初音、創を狙ってた?」
「うーん? 彼氏より兄に欲しい」
「兄に? なるほど……並んでいるとそんな感じに見えなくも。そもそも創には実の妹もいるわけだし、兄的なオーラが出ていそうね……」
「そうか?」
俺が首を傾げて尋ねると、
「そうよ」
と言われてしまった。
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