第509話 トレント2
身体強化をして、背後から剣で薙ぐ。
といっても、トレント系は確かに顔はついているが、別にそれだけで見ているというわけではないらしく、背後から襲いかかってもすぐに気づくと言われる。
それでも正面からよりは多少遅れるので、無意味な行動では無い。
実際、背後から迫る俺にトレントは気づかず、俺は上部を切り落とすことに成功する。
そしてその瞬間、自らの枝を鞭のようにしならせて俺を叩きにかかってきた。
「やっぱり反応がいいな……」
トレントもノーマルなものはそこまで強くは無いが、流石に第四エリアに出現するくらいになってくると、弱いとは言い切れないくらいに強くなってくるのだなと思った。
ノーマルスライムなんかだと、まず何十匹集まろうと相手にならないくらいの強さだ。
それでも、今の俺にとっては油断さえしなければ問題の無い相手でもある。
全くの無傷で終わらせられるかは少し運が必要になるだろうが……。
「……おっと!」
再度近づき攻撃しようとしたら、後ろの方にいたオリーブトレントがその実を撃ち込んでくる。
一発では無い。
断続的に何発も、だ。
やはり砲弾がリンゴ程とかなり大きいからか強力で、俺が避けて後ろに飛んでったものは、背後にある木々に命中し、めきめきと倒れさせていく。
地面に撃たれれば土や砂利が吹っ飛び、土煙が上がって視界を封じられる。
なんというか、地味にいやらしい攻撃だが……。
「それくらいで俺は見えなくなったりしないから、なっ!」
確かに物理的な視界は封じられるけれども、俺には魔力を直接視認できる目がある。
そして、魔物というのはどんなものでも多かれ少なかれ魔力を帯びている。
つまり、俺の目からは見ればこれくらいの土煙であれば丸見えなのだ。
もちろん、魔力を遮るような素材があったり、大量に同質の魔力があったりしたら見えなくなったりもするが、ここにはそのようなものはない。
だから土煙の中をまっすぐ進み、そして思い切り剣を振るった。
今度は、トレントの中心部を切断することに成功する。
トレントは核が弱点になっている魔物だから、それさえ見つけて破壊すれば倒せるが、逆を言えばそれが生きてる限りはどれだけ体を失おうと動き続けるところも厄介だった。
その多くは、頭部……に見える辺りの部分にあることが多く、そのため最初はそこを狙って切りつけたが、残念ながら外れだった。
二番目に多いのは、幹の中央辺りと言われる。
その方が、全体の動きがいい個体であることが多いらしい。
核から全体に指令がいくから、かな?
魔物の生態はよく分からないが……。
「……よし、当たり!」
核らしきものが幹の中に見えた。
俺はその機会を逃すこと無く、剣を差し込んで破壊する。
するとその瞬間、トレントの幹に形作られていた顔が消滅し、普通の樹木のように倒れた。
しかし、まだもう一匹残っている。
こっちに関してはオリーブの実を撃ち込まれてしまったから丁寧に倒す必要は無い。
思い切り剣を叩きつけるように攻撃していく。
向こうもガンガン、実を放ってくるが、すべて俺の目には見えている。
身体強化の効果様々だな。
そのまましばらく攻撃し続けると、徐々にトレントの動きに精彩がなくなっていく。
核があれば動く、とは言っても、ダメージが大きすぎるとその速度は落ちるのだな。
そして鈍くなったトレントの頭部を先ほどと同じように切り落とすと……。
「今度はこっちが正解だな!」
核があったので、それを叩き潰したのだった。
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