第507話 悩み
アイアンスライムの核をすんなり入手できたので、次はオリーブトレントと首狩兎になるが、これらが多くいるだろう場所は第四エリアになる。
オリーブトレントはあんまり湖に近すぎても水気が多すぎるからいないだろう。
だから外縁部かな。
第三エリアの魔物はアイアンスライムを探す中でいくつか見たが、オリーブトレントと比べると一段下がる強さなので、ここで探すのは難しい。
首狩兎は、というか首狩兎に限らず、迷宮の魔物であっても生き物として振る舞うため、水場が近い方が遭遇率が上がる。
迷宮の魔物は食事をするのか?という感じだが、これはするものとしないものがいる。
大抵はするが、ボスはしないというのが基本になるな。
後は、アンデッド系と言われるような魔物もしないものが多い。
ゾンビとかは生者を見ると食おうとしてくるが、デュラハンとかゴーストとか、そういうのは直接人の肉を食おうとはしない。
生気を吸おうとしたりはあるけれどな。
そういう意味だと植物系の魔物も食事をするといえばする。
水を吸い、酸素と光を受けて光合成するわけだな。
さらに自ら移動して襲いかかってくるのだから、本当に植物なのかという気がしてくるが、ミドリムシとか食虫植物みたいなもんだろうなと考えるしかない。
かといって、人間を殺したからといって食べるわけでもないのだが。
食虫植物的な魔物もいて、そういう場合は人間も捕食するのだが、少数派かもしれないな。
魔物のバリエーションは多岐に亘るのだった。
「……そろそろ第四エリアだけど……オリーブトレント……どこだ……?」
そんなことを呟きながら森を進む。
第四エリアの中心部には大きな湖があるが、まだそこまでは遠い。
だから首狩兎より先にオリーブトレントだ。
まぁこの辺でも首狩兎が出てきたらそれはそれで倒すのだが……。
それにしても、さっきから気になっているのだが、気配を感じる。
魔物ではない。
そうではなく、人間のものだ。
一体いつからついてきていたのか、俺と一定距離を保ちながらずっとついてきている何者かがいるのだ。
普通なら気づかないほどに隠密に長けているが、俺の場合、魔力を視認できるからな。
どうしても移動時に魔力光が俺にははっきりと見えるため、あんまり隠密の意味がない。
スキルを使う人間の限界というところだろうか。
アーツだとこれがかなり魔力光を抑えられたりもすることが分かっていて、雹菜なんかは俺対策とか言いながらその辺りを鍛えているのだが、一般的にはほとんど知られていない事実だろう。
もちろん、俺対策、というのは冗談であって、あくまでも同じ能力……魔力を視認できる力を持った奴対策として研究している。
これは人間に限った話ではなく、魔物でも、もしかしたら魔力を目ではっきりと視認できるものがいる可能性を考えると、必要な修行だろうな。
もしかしたら今までもいたのかもしれないが、それが問題になるような状況で戦ったことはまだないらしい。
しかしこれから先もそうであるとは限らないから、と頑張っているのだった。
まぁ、それはいいにしても……どうすべきかな。
隠れているやつに話しかけるか?
俺を追いかけないでくださいって。
そんなことをしたら、俺の能力もある程度推測されてバレそうな気がするし、それは避けたいが……。
かといってずっと観察されていても、俺は満足に戦えないしなぁ。
どうしたものか……。
俺は悩んでいた。
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