第504話 第二エリア
第二エリアは第一エリアと比べるとグッと見通しが悪くなる。
まばらにしか生えていなかった木々が増えて、よく手入れされた森くらいの感じになる。
それでも一応、道が存在していて、そこを通ると魔物に遭遇する確率が低い。
これは、こういった迷宮だとよくあることで、迷宮内部の平原や森などのエリアに道が存在している場合は、そこを歩いた方が安全というのはよく言われる。
ただ、次のエリアに向かって真っ直ぐに最短距離を通っているわけではないので、時間がかかる。
加えて他の冒険者とも
俺はと言えば、今は別に他の冒険者に出会っても昇格試験の受験者であろうし、今のところ何もアイテムも持っていないから、たとえそうなったとしても問題ないということが分かっている。
だから普通に道を素直に進んでいた。
あえて直進してもいいのだが、そうなると道を外れるから迷いやすくなるんだよな。
今の俺なら大丈夫、とは思うが、無茶をする意味は特にない。
普通に走っていけば第二エリアも二十分程度で抜けられるはずだ。
しかし、いくら魔物に遭遇しにくい、と言ってもそれは絶対ではない。
「……オークか。ノーマルで良かった」
道を塞ぐようにして現れたのは、いわゆる豚が直立したような姿の魔物、オークだった。
粗末な衣服と棍棒しか持っておらず、ノーマル個体であることが分かる。
しかし、考えてみればこいつらもゴブリンと同じように、どこかの世界に文明を持って生きている個体がいるのだろうな。
もしもそのような存在と出会ったら、果たして交流を持てるだろうか。
オークは一般的な成人男性よりも体格が大きく、それに比例して力も強い。
冒険者はステータスによる強化があるから、それなりの冒険者と比べれば向こうの方が弱くはなるが、一般人なら一瞬で握り潰されるほどだ。
そして、こいつに殺された冒険者たちは数知れない。
そんな相手と交流……うーん、まぁでも、そういう意味ではゴブリンも同じか。
むしろ人間が殺された数はゴブリンからの方が多そうだ。
最も人類が遭遇してきた魔物のうちの一つだからな。
オークはそれなりの腕になってからでないと入れないエリアにいるものだから、こいつに殺されるようならばそれは実力不足だったと言える。
そうなると、むしろすっきりと交流はできるか。
問題は、オークは、オークを解体した場合に得られる肉が非常に美味ということだろうか。
銀座でも高級店で出るような肉はオーク肉を採用している場合が少なくない。
流通自体がそれほど多くないから、希少価値も高い。
それが、会話できるような存在だったら……。
まぁでも、人間は、というか日本人は美味しければそんなのは気にしないか?
そもそも最初にオーク肉を食べようとした段階でもそういう議論はあったらしいからな。
結局美味しいから食べているわけだが……人間は度し難い生き物だ……。
そんなことを考えながら、俺はオークを切り付ける。
力ではしっかりこっちの方が勝っている上、向こうの動きは鈍かった。
速度的にはゴブリンの方が上なんだよな。
もちろん、種類にもよるが、どちらもノーマルなら、という話だ。
だから膝を切りつけ、体重を支えきれなくなったあたりで、差し出された首を落とせば、それで終わりだった。
「……時間があれば解体するんだけどな。流石に無理なんで放置していこ……」
放っておいてもそのうち迷宮に吸収されて消えるから、後続の受験者に血生臭さで迷惑をかけるということもない。
俺は先を急いだ。
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