第500話 試験内容
ともあれ、まずはどんなアイテムを獲得しなければならないのか、が重要だ。
同じものを取り合うのか、冒険者によって異なるのか。
前者だと百人もいれば間違いなく争奪戦になるだろうからな。
さて、どうなる。
そう思って試験官の言葉を待っていると、彼の後ろから何か箱のようなものを持っている女性が数人出てきて横に並んだ。
受験者たちが注目していると、試験官は言う。
「今からお前たちにはクジを引いてもらう! そこには今回、獲得しなければならないアイテムの名称が書いてある。つまり、提出しなければならないアイテムは人それぞれ、というわけだ。難易度についても全て完全に同じ、というわけにはいかないが、概ね同じくらいにはなっている。では、引いてくれ!」
くじ引きで決めるのか。
公平ではあるが、運の要素が強いな。
冒険者には運も必要か……まぁ、先日、高位冒険者しかいないパーティーで《転職の塔》の迷宮を攻略している時、世間話で彼らみんな、最後に生死を分けるのは結局運だ、みたいなこと言ってたしな。
もちろん、最後まで抗うという点についても争いはなかったが、全てやり切った後には天に運を任せるしかないと。
理解できる話だ。
ゾロゾロと受験者たちが列に並ぶ。
くじの入ってる箱は四つなので一列二、三十人くらいだ。
次々に引いていき、そして書いてある文字を見て皆、一喜一憂している。
いくら同じくらいの難易度、と言われても得意不得意はどうしたって生じるしな。
素早さに自信のない奴が、素早い魔物の素材を持ってこいとか言われたら厳しいよとなるみたいなことは普通にありうる。
で、俺はどうかというと……。
「……《アイアンスライムの核》《オリーブトレントの実》《首狩兎の尻尾》。おい、なんで高難度なやつばかり……」
突っ込まずにはいられなかった。
大体同じ難易度なんじゃなかったのか?
周りの声を拾うに、他の連中のは大したアイテムではない。
だが俺のは……。
アイアンスライムはとにかく硬いことで知られ、かつ見つかりにくい魔物で有名だ。探すところから始めないとならず、見つからなければ話にもならないということだ。
オリーブトレントは弾丸のように実を発射し、そしてその実は何かにぶつかり次第破裂する。撃ち込んできた実をゲットすれば簡単!とはならないということである。倒して剥ぎ取るしかない。しかし普通なら接近するところかして困難だ。遠くから狙うしかないが、実を刺激しても破裂してしまうので、繊細な技術が求められる。
首狩兎は群れになって襲いかかってくる好戦的な兎の魔物だ。しかも名前の通り的確に首を狩りに来るので冒険者たちから恐れられている。
D級に求めるアイテムじゃないよ……。
俺の呟きを聞いていたのか、試験官が、
「……ん? そんなクジ入れてたか……? まぁ引いてしまったものは仕方がない。頑張れ」
とか言って通り過ぎていった。
他の受験者たちにも何か言っている。
試験官がそんな風に気軽に話しかけるのはアリなのか、と思うがそういうところに関しては昇格試験は緩いな。
もちろん、どうやったらアイテムを獲得できるかみたいなアドバイスをするのは無しだが。
まぁ……しかし引いてしまったものは仕方がないというのは本当だな。
厳しいのは事実だが、絶対に無理だとも思っていない。
むしろやる気が出てくるというものだ。
「では、迷宮に入る! 行くぞ!」
試験官がそう言い、冒険者たちはぞろぞろと迷宮入り口に向かった。
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