第495話 イベント
「……にしてもこれじゃあ虫人とやらと交渉なんて難しそうだな。いずれ会った時に考える、くらいの方がいいかもしれねぇ」
賀東さんがそう言った。
「私もそう思いますね。すでに《虫の魔物》には手を出してしまっているわけですし、それを理由に和解など出来ないと言われるならもう手遅れですし」
「お前……まぁ確かにそうか。襲いかかってくるからやむを得ない行動だったんだが」
「向こうからしてみればただの言い訳になってしまうでしょうしね」
「ズバズバ言うな。ただ正しい。ってことで、とりあえず、蜥蜴王様からの依頼は受ける方針で行こうと思うんだが。皆どうだ?」
これについてそこそこ話し合ったが、結局受けてみないと話が進まなそうだ、という方向でまとまった。
虫人との話し合い、についてはいずれ見えることがあったらやってみればいい。
案内人役の蜥蜴人にもそういう感じで行くつもりだがどうか、と賀東さんが意見を求めてみたのだが、それが無難でしょうね、と言っていた。
そもそも虫人への呼びかけは蜥蜴人も普通にやっているらしく、何か問題がある行動では無いという。
ただ、結果はまるで出ていないので期待薄としか言えないとは言われてしまったが。
そして俺たちは王城へ戻り、蜥蜴人王に言う。
「陛下。私たちは陛下からのご依頼を受けることに決めました」
「本当か!? では、ここに誓いを……」
蜥蜴人王がそう言うと同時に、俺たちは皆、驚く。
蜥蜴人王の前に突然、《ステータスプレート》のようなウインドウが出現し、
メインイベント《蜥蜴人王の依頼》が発生しました。受諾しますか?
・はい
・いいえ
と表示されたからだ。
俺たちは顔を見合わせる。
どうやら蜥蜴人たちには見えていないようで、少し怪訝そうに俺たちを見ていた。
ただ、もうどうするか方針は決まっていたし、あまりここで黙っていて時間制限でアウトとかになっても困る。
だから賀東さんが、
「……誓います」
と口にすると、ウインドウの《はい》が選択された。
さらに、
※イベントは中断することが出来ます。
※メインイベントの発生と同時に、サブイベントが解放されました!街中で探してみよう!
などなど、いくつもの注意事項が同時にずらっと出てきた。
いずれも初めて見る表示で、驚く。
しかしこの場で確認しきれる数でも内容でも無く、とりあえずはその場では蜥蜴人王の話を全て聞き、それから準備のためと言って一旦下がらせて貰った。
この一旦下がらせて貰ってもいいか、という願いをいつもすぐに受け入れて貰えるのは、注意事項の中断効が働いているからなのだろうか?
それとも中断とはまた別の何かなのだろうか?
検証しないとわからないな……。
しかしどれから検証すれば良いのかも正直謎だ。
そもそもイベントとは何だ。
おそらくはこの一連の出来事が全て、イベントだということなのだろうが……。
しかし蜥蜴人王の依頼を受けてから出ないと始まったことにはなってなかったようだし、今までのはオープニングムービー的な?
いや、そんなゲームでは無いのだから、と反論が浮かぶが、そもそも迷宮がどうだとかスキルがどうだとか、そんなことがそもそもゲームみたいなものなのだ。
今更要素がさらに増えたところで、反論しても無駄だ。
「……まぁみんな思うところはあるだろう。だから、とりあえず話し合わなきゃならない。出来ることなら、一旦中断して戻りたくもなってきてるしな」
宿の一室で、みんなを集めて賀東さんがそう言った。
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