第485話 ドロップ品
「……お、ドロップが残ってますね」
世良さんがそう言った。
確かに先ほどまで蜥蜴人がいたその場所には、宝箱が出現していた。
ドロップ品はむき出しのまま出現する場合と、宝箱が出る場合の二つがあるな。
どちらかというと宝箱の方がいいものが出ることが多いと言われる。
むき出しのまま、の方は魔物が持っていたものが直接とかそういうことが多いな。
大抵、魔物が持っていた武具とかは魔物が迷宮に呑まれて消えるときに、一緒に消えてしまうことが多いから。
ただ、魔物は消える前の一定時間は剥ぎ取りなどが可能だったりするので、この辺りのルールの詳しい傾向ははっきりとしていない。
武具に関しては倒した魔物から奪っても消えてしまうことが多いんだけどな。
百パーセントとは言えない。
しかし、生きて戦っているときに奪い取るような形で取ると、消えないことが多いといわれている。
まぁ、迷宮の法則とか考えるだけで無駄なところもあるので、何ともいえないんだけどな。
その辺を一生懸命やるべきは俺たち冒険者と言うより学者の仕事だ。
俺たちは自分たちの利益を最大化出来るような法則だけを理解していればそれで十分だ。
それでも気になるから考えてしまうのだけど。
そんなことを考えていると、賀東さんがパカリ、と宝箱を開ける。
もちろん、事前に罠などがかかっていないかチェックしてからだ。
矢が飛び出してくる程度なら構わないが、時には即死したりする術がかかっていたりすることもあるからな。
ただそこまで致命的な罠は却って分かりやすかったりするので、その辺のバランスは迷宮が取ってくれている気がする。
親切なのか危険なのか分からない存在だよな……迷宮って。
「こいつは……胸当てか。さっきの蜥蜴人が身につけてた奴だな。サイズ的には女用だが……恵か雹菜、いるか?」
賀東さんがそう言ってくる。
まぁ女性用なら流石に男には身につけられないしな。
ただ、かなり良い品に見える。
鑑定は出来ないが、魔力の流れを見ると、術を阻害する系統のスキルに似た感じを受ける。
魔道具製作にも最近俺は手を出しつつあるのだが、スキルと理屈は同じなのだが、道具に付与するからか、同じ効果でも違う魔力の流し方をする必要があったりするので簡単では無いのだ。
魔道具職人の人々はそれをスキルで直感的に行えるが、俺の場合はゼロからだからな……。
とはいえ、そのお陰で初見の魔道具でもなんとなく効果が分かるようになってきたのだが。
「雹菜、あれ、術の効果を阻害することが出来るぞ」
俺がそう言うと、
「そうなの? へぇ……じゃあ相当良いものね。売りに出せば数千万するかも」
「……そんなにか」
「まぁどのレベルで阻害してくれるのかにもよるけど、滅多に出ないからね。ここだともしかしたら出やすいのかもしれないけど……あっ、でも術を阻害するなら、補助術効きにくくなるんじゃ……?」
「いや、それは問題ない。打ち込める隙間があるから。俺には見えるし。まぁ多少狙いをつけにくくはなるけど……あれくらいなら誤差だ」
普通の補助術士ならこつを掴むまで大変かもしれないが、無理ということもないと思う。
そう思った俺の言葉に雹菜は安心して頷いて、
「それなら問題ないわね……今の話、みんなにしてもいい?」
「あぁ、構わないぞ」
そして、情報を共有すると、みんななるほど、という顔をし、誰が持つかを相談した。
結局、防御力が比較的この中だと低めな世良さんが身につけることに決まったのおだった。
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