第481話 迷宮前
「さぁ、こっからだぜ」
次の日、俺たちは《転職の塔》へと集まった。
もちろん、その理由は《転職の塔》迷宮の攻略のためだ。
つい先日までレッサードラゴンが再湧出し、守っていた扉の前に、俺たちはいる。
幸い、というか予想通り、というか、レッサードラゴンはやはり今はいない。
一応、今日まで本当に出現しないか確認するために監視員のような役目の冒険者を途切れなく置いてはいたらしい。
ボス部屋というのんは、そこに人がいる限り新しくボスが湧出しない場所もある、と言われるからだ。
ただこれはあくまでもそういうところもある、というに過ぎず、全部がそうだというわけではない。
ここはどうなのかといえば、まだ誰もそれを確認していないので分からない。
だから念のために、というくらいの意味しかないな。
もしも再湧出してしまったら、死を覚悟するか、必死で逃げるかしかなかったわけで、結構命がけの任務だったと思う。
それでもやってくれる冒険者がいたのは、ここから先を攻略しないと人類に先は無いと皆、理解しているからだ。
「迷宮の中は強敵だらけだって聞きますが、本当ですか?」
俺が相良さんに尋ねる。
この奥を主に、というか以前レッサードラゴンが倒された後からずっと挑戦し続けたのがまさに彼ら《影供》であるから、よく知っているだろうと思っての質問だった。
彼は頷いて答える。
「ええ、本当ですよ。事前に伝えたとおり、中の構造は塔の中とも思えないような広い空間が広がっているのですが……」
「あぁ、確か岩山があると……」
中に入るとまず、洞窟のような空間に出るらしいのだが、そこをしばらく進むと、急に開けた場所に出るようだ。
ただ、そこは岩山で、鉱山のように人の手で作られたかのような通路というか道は一応あって、そこを進んでいく感じで攻略するのだという。
ちなみに、そこから飛び降りたりするとどうなるのか、という話だが、一応、地上もあるようだが、通路が続いているのはあくまでも岩山沿いで、地上には特別見るべきものはないようだ。
一応、たまに魔道具が転がっていたりするようだが、滅多にないという。
岩山を歩いていた方が、ずっとそういうものを手にする機会も多いらしい。
「そうなんですよ。だからか魔物もかなり頑強なものが多くて……お恥ずかしながら、私たちでは少しばかり攻撃力が足りなかったようです。それで体力の消耗が激しくて、先に進めずに苦戦を」
「なるほど……でも相良さんの力なら……」
雹菜と戦っているのを見る限り、攻撃力も決して低くなかったように思うが、相良さんは首を横に振った。
「一瞬……数分程度ならなんとかなるんですけどね。私は基本的に素早さや身のこなしを武器にしているので、どうしても難しくて。他に攻撃力に長けたギルドに声をかけたりもしたのですが、以前のレッサードラゴン討伐で主要メンバーを失って、まずは地力の底上げに注力しているところが多く、どうにも参加してくれず……」
色々事情があったようだ。
しかし、聞いている限り、攻撃力が十分にあればなんとかなりそうにも思える。
それは相良さんも理解しているようで、
「今回、創君が参加してくれるので、かなり頼もしく思ってますよ。素の状態でも補助術をかけてもらえば、十分にあの岩山で私たちでも戦えそうですから」
そう言って微笑んだのだった。
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