第463話 ドーム内にて
ドームの中に入ると、観客席はがらんとしていた。
人の気配を察知して見るも、やはりそこには誰もいない。
しかし、ドームの中心と、ベンチ部分には人がいた。
誰なのかは言うまでもない。
《黒鷹》のメンバーと、《影供》の人たちだ。
事前に言っていたダンジョン攻略メンバーより人数が多いが、記録や分析のためのメンバーも両者、連れてきているからだ。
これについては雹菜が話し合って認めているので問題ない。
今日はしっかりと俺が補助術をかけて、その使い心地などを試してもらうけれど、後で映像などで見返して、問題ありそうなところを見つける作業なんかはどうしても必要になるからな。
もちろん、今日撮った映像などは完全に機密として扱われるという前提である。
漏れた場合は相当な違約金を取る契約をしたので、俺は金額を聞いて驚いたが、これくらい普通よと言われてしまった。
まぁどちらのギルドにしろ、払おうと思えば普通に払える額なのが笑えないな。
冒険者というのはA級クラスまで行けばとてつもない稼ぎを毎年出すものだから……。
いまだにE級の俺ですら、結構な額を稼げているしな。
まぁ、そもそも稼ぎ自体は級というより迷宮でどんな素材や魔道具を持ってこられるかにかかっているから、級そのもので決まるわけでもない。
ギルドに所属していれば、給料という形で反映されるが、《無色の団》だと雹菜を含め、メンバー全員が俺の事情を理解しているため、かなり高い給料も支払われている。
……まぁ、金の話はいいか。
それよりも、今はドームの中心でやり合っている二人だ。
そう、今、目の前では、二人の人物が戦闘をしていた。
俺と雹菜はベンチまで降りて、そこにいる人間に話を聞く。
「……
雹菜がそう言って挨拶をした相手は、《黒鷹》の副長である世良恵だ。
B級であり、雹菜と同じクラス……ただ年齢は七つか八つほど上だった記憶がある。
それでも二十代半ばでB級なのだから、とんでもない実力者だが、その割に腰が低いというか、低級冒険者にも差別はしない人だ。
「あぁ、雹菜さんに創さん。お待ちしてましたよ……待ちすぎて、うちの総長と《影供》の相良さんが戦い始めてしまいましたけど……」
「やっぱりあれ、賀東さんですよね。もう片方は……相良さんですか。確かに、賀東さんとほとんど変わらない実力のようですし、いくら《影供》と言っても、賀東さんと一対一でやりあえるのは相良さんくらいしかいないですか」
「そうですね。《影供》は、以前のレッサードラゴン討伐や《転職の塔》奥のダンジョン攻略で有力なメンバーを失ったギルド構成員が作った非公式ギルドですから。どうしても二番手三番手クラスが多くなります。相良さんくらいですね、一番手を張れるのは。だから《影供》のリーダーなわけですが」
「ですけど、他の人たちもB級クラスはそれなりにいるのですよね?」
「ええ。今回のダンジョン攻略では、《影供》には三人出してもらいますが、相良さん以外の二人はB級です。ですから、A級二人に、B級が五人、そして……E級が一人、という非常に変則的なパーティーで攻略することになりますが……大丈夫でしょうか?」
世良さんが俺の方に視線を向けて尋ねてくる。
「ええと……」
と、なんて言ったらいいものか悩んでいると、世良さんは少し慌てた様子で、
「いえ、実力を疑っているわけではないのです。ですけど、今回の攻略は非常に危険です。死ぬ可能性が普通にある。そこに一緒に行っても、問題ないのかと心配で……。もちろん、私たちは創さんを守るつもりですが……賀東は不思議と問題ないと言っているんですけどね……」
そう言いながら首を傾げていた。
どうやら、賀東さんは俺に何かを感じてくれているらしい。
見てわかるようなわかりやすい実力を俺は持っていないはずだが、やっぱりA級はそういう勘も違う、ということだろうか。
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