第461話 種族の現状
「……お、おい! あれって……白宮雹菜じゃないか!?」
ドーム前に集う群衆に近づくと、誰かがこちらを見てそう叫んだ。
おそらくは、記者の一人だろう。
今の雹菜の姿を見て、すぐにそう判断できる一般人はまずいないからだ。
《魔氷人》となり、白髪に黒と赤に彩られた瞳は、誰から見ても異様で、顔立ちよりもその特異性の方に目が行く。
角だって生えているし……コスプレした人間をパッと見で元の人間だと判断できる者は少ないように、一発で雹菜だとは普通、分からない。
けれど、冒険者を専門に追いかけている記者ならば別だ。
彼らは最近の冒険者たちの変化──つまりは、種族によって大きく見た目が変化していることを認識している。
だから、ここまで大きく変わった雹菜の顔にも気づけたのだ。
とはいえ、一般人であっても一応、ここのところの冒険者の変化は知っている者は知っているんだけどな。
何せ、それこそ変化した種族の姿でテレビに出る冒険者も稀に見るくらいだ。
かなりセンセーショナルな報道がなされることもある。
ただ、それでも多くの冒険者は人類とさほど変わらない見た目の種族にしかなれていないか、まだ他種族になれない者ばかりなので、テレビで見る機会も今はまだそこまで多くない。
《種族選択》についてだが、俺たちは《転職の塔》にいた全員が普通に選択可能だったため、ほとんどの人類──というか冒険者が、ある程度は選択が出来るものだと考えていた。
けれど実際にはそうではなかったらしい。
賀東さんは《
外国でも《種族選択》が可能になっている人はそれなりにいるのだが、そういった例も含めて推測されているのは、それなりの実力に至っているか、何かしらの条件を満たしていないと《種族選択》は出来ないのではないか、と言われている。
日本だと、A級B級くらいまでの実力者たちは、ほぼ全員に《種族選択》できる種族が出たらしい。
しかも、特殊なものも多かったようだ。
賀東さんの《蜥蜴人》然り、あまり見ない種族が出ている人が結構いるという。
そこから下がって、C級になると、《種族選択》できる人はぐっと下がる。
というか、滅多にいなくなる。
そしてD級以下はまずいない、と言ってもいいくらいの割合になるという。
じゃあ俺は?
という話にもなるだろうが、これについてはおそらく例外だろうな。
俺は《オリジン》だ。
そして俺が選んだ種族が、全世界に、扉が開かれた、とかアナウンスされたのだ。
俺には特殊な選択権が与えられている、と考えるのが適切だろう。
なんだかズルをしているような気分にもなって来るが、こればかりは仕方がない。
そもそも、スキルゼロの俺にとって、スキル持ちこそがズルなのだ。
その可能性すら持たない俺が、多少の特殊な権利を持っていても許されるのではないだろうか。
と言い訳したくなる。
まぁ、何も頑張っていないわけじゃないしな。
死ぬ危険も、多分普通の冒険者に比べて格段に多かったように思うし。
その報酬なのだと思えば、悪くはないだろう……。
そんなことを考えながら前に進むと、俺たちは群衆に囲まれる。
一般の、高位冒険者に対するミーハーと思われる人々──若い女性たちは、雹菜に群がり、
「雹菜ちゃんこっち見て!」「握手してください!」「サインをぉー!」
などと好きに叫んでいる。
よく見る光景だが、大変そうだな、と思っていると俺の方には記者がよってきた。
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