第457話 連携
賀東さんの声に、盾職たちは防御系スキルを発動し、しっかりと守ろうとする。
しかし……。
──パリィン!!
と、音を立てて、彼らが張ったシールドはレッサードラゴンの
そして、周囲に火炎が撒かれる。
それを視認した雹菜が、
「……この辺からね! 行くわ! 補助を!」
そう言って魔力を練り込み始めたので俺は即座に補助術を発動する。
雹菜との補助術との連携はいくつも試していて、何が欲しいのかは僅かな予備動作からも察した。
ここは術系強化だな。
そしてそのまま雹菜は前に進み、
「……《アイシクルシールド》!」
崩れたシールドの前に、一人で術士たち全員が貼っていたのと同規模のシールドを張る。
それを冒険者たちは一瞬驚いて見つめるも、今ここでするのは惚けることではないとすぐに悟ったのか即座に陣形を立て直しに動く。
さらに、
「あと三秒だ! 戦士系!」
賀東さんがそう叫ぶ。
吐息の持続時間はいつも一定とは限らないが、火炎の僅かな威力低下から残り時間を察することは出来るとの事前情報があった。
その僅かな威力低下を賀東さんは見抜いたのだろう。
俺から見ても、レッサードラゴンの喉元に感じられる魔力が徐々に減少していくのが見えた。
確かに、残りはそれくらいだ。
そして、実際に吐息の火が掻き消えると同時に、戦士系が前に出る。
今度もタメ系スキルを皆、十分に準備できたようで、それぞれが武器を思い切り振り下ろした。
少しずつ削られていくレッサードラゴンに、確かに正気が見えてきたように思うが……いや。
『飛んだぞ!!』
冒険者のそんな叫び声がホールに響く。
レッサードラゴンは、ついに上空へと飛んだ。
しかし、ホールの上部はそこまでの広さはない。
それでも、飛行によって取られた距離は痛かった。
このまま延々とタコ殴りにすれば余裕を持って勝てそうな気もしたが……。
「……創!」
雹菜のよく届く声が耳に響き、さらに補助術をかける。
今度は脚力上昇だ。
雹菜は俺が補助術をかける前にすでに地面を蹴り、さらに空中に氷の足場を出現させる。
それを踏み締める直前あたりに俺の補助術がかかり、そこからさらに氷の足場をいくつも生み出していく。
駆け上がる雹菜の先にいるのは、もちろん、空中を飛ぶレッサードラゴンだ。
賀東さんが指示を出しながら、術士たちに術を放たせているが、うまく避けて当たらない。
雹菜がいるから狙いが付けずらい、ということもないのは、雹菜の安全とかそういうのは気にしていない風だからだ。
と言っても、死んでも構わない、と考えているというよりも雹菜なら避けられると思っているようだ。
実際、一つも術は雹菜にも当たらない。
そんな雹菜がついに、レッサードラゴンの眼前に到達する。
「……《氷落斬》!!」
雹菜が振り上げた細剣に、大量の氷が付着するように出現する。
そしてまるで巨大な剣のように形作られ、それを雹菜がレッサードラゴンの頭部に振り下ろした。
「……グルアァァァ!!」
と、痛みの故にか巨大な呻き声をあげたレッサードラゴンは、そのまま地面に叩き落とされる。
そして、
──ゴゴォン!!
と轟音と立てて墜落した。
この隙を狙わらない冒険者たちではなく、
「……袋叩きだ!!」
そこから全員で攻撃を加えていく。
戦士系、術士系問わずにだ。
そして……。
「……グァァァァ……」
と、弱々しい悲鳴をあげて、レッサードラゴンは崩れ落ちる。
次第にゆっくりになっていく呼吸と、静かに閉じられていく瞳。
そして、全く動かなくなったところで、やっと、全員がハッとする。
『……勝った、のか?』
『まさか。誰も命を落としてないぞ……』
『いや、倒れている奴はいる! 重傷者だ! だが、まだみんな息がある!!』
そこからは、全員の傷を手分けして確認し、回復薬を使用していった。
そして、本当に誰も命を落としていないことがはっきりしてから、全員が大声で勝鬨をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます