第446話 見た目

「……ねぇ、今、ジャドと直接話していなかった?」


 雹菜が俺にそう尋ねてくる。

 これに俺は、


「あぁ、そうだな。どうもゴブリンキングになって、ゴブリン語が普通に話せるようになったみたいだ。スキルにあるわけじゃなさそうだから、スキルではないみたいだけど……」


 そう答える。


「うーん、ゴブリンはみんな普通に使える、スキルではない固有技能みたいな感じかしら? もしかしたら他の種族にもあるのかも……というか、特定のスキルの魔力消費が少ないとか精霊が見えるとか、その辺がまさにそういうことなのかもしれないわね」


「そうかもな。それに言葉に関しては、ゴブリンの場合、ここにジャドがいるからゴブリン語の検証ができたけど、エルフとかドワーフは、本物……というか、最初からそうである存在がいないからな。それこそヨーロッパに行って、本物のエルフやドワーフと話してみれば、エルフやドワーフ固有の言語も話せるんじゃないか?」


 それらに固有の言語があるのかどうかは分からないが……いや、少なくともこの世界の言葉ではない言語は身につけているはずだろう。

 他の世界の住人のはずだからだ。

 かといって、それがエルフ固有とかドワーフ固有のそれかどうかはなんとも言えないが。

 ゴブリンの世界と異なり、彼らの世界は他の種族と共生していたかもしれないし、そうしたら種族固有の言葉、というよりも、その世界固有の言葉とかになるのか?

 そしてその場合は話せるのかどうか……うーん、なんとも言えないところである。

 そのあたりについて言ってみると、みんな悩んでしまったが、結局のところ……。


「いずれ実際に会ってから考えればいいのよ。そういうの考えるのは学者の仕事だからね。私たちは、冒険者として必要な範囲で検証すればそれでいいわ」


 そういう結論になった。

 

「ところで、俺の見た目、どうだ?」


 改めてその辺について聞いてみると、三者三様の返答が返ってくる。

 まず雹菜だが、


「……顔立ちとかに面影は残っているし、私には創だなって分かるわ。肌の色も緑色、と言ってもそこまで濃くないし……ただまぁ、人類とは言い難いわね。総じて、悪くない見た目よ」


 と言う。

 続けて黒田さんは、


「……悪くないって私は言えないかなぁ。ちょっと怖いよ。でも見慣れれば大丈夫なのかも……? 実際、ジャドはもう見慣れたし。知ってる人がゴブリンナイズされてしまった!っていう衝撃が大きいからかな?」


 と少しばかり困惑しているようだった。

 まぁ、ジャドに対しては確かに何の衒いもなく交流しているので、俺がゴブリンになった、という事実の与える衝撃が大きいのだろうな。

 確かに知り合いがいきなり全然違う種族になったらビビるか。

 静さんは、


「ゴブリン族の美醜についてはよく分からないのでそのあたりについてはなんとも言えませんが、どことなくジャドに比べて、迫力というか威厳のようなものを感じますね。これは種族がゴブリンキングだから、でしょうか? ジャドとは存在の格が違うような……いえ、ジャドのことを貶めているわけではないですからね」


 そう言った。

 これにジャドは、


「いや、それについては俺も納得だ。今のハジメからは抗いがたい威厳を感じるからな……やはり、ゴブリンキング、というのはゴブリンの王ということなのかもしれん。記憶の中にある、ゴブリンの王も、このような威厳があったようだ。種族もゴブリンキングだったようだしな」


 そう言った。

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