第436話 変化

「……でもそもそも、どうやって種族を変えるんだ?」


 俺がふと口にすると、全員が確かに、という顔をする。

 ただ雹菜が、


「《ステータスプレート》に記載されてるわけだから、《ステータスプレート》で出来る……じゃないかしら?」


 と言った。


「とりあえずタップしてみればってことか?」


「そうそう。タップすると同時に、種族が変わってしまったらまずいから、試すのはちょっと躊躇してたけど……」


 みんな、とりあえず種族欄を開いてみただけだ。

 その上で、それぞれの種族の名前をタップすれば、そのまま変化してしまうかもしれないと思い、触れていなかったわけだ。


『ふむ、では、俺がやってみるか……お?』


 ジャドがそう言いながら、《ステータスプレート》に触れる。

 すると、何か起こったらしい。


「どうだったの?」


 雹菜が尋ねると、ジャドは言った。


『うむ。に種族を変更しますか? はい いいえ》》という表示が出てきたぞ。やはり、ここから種族の変更が可能なのだろうな』


「おぉ……俺もタップしてみたい」


 感嘆して俺がそう呟くと、雹菜が言う。


「いきなりタップするのはやめてよ。いずれその機会はあるんだから。特に、創のは種族自体特殊すぎるから、先に試すのは寧ろ私たちよ」


「好きでこんな特殊なラインナップを選んだわけじゃないんだが……」


「そうでしょうけどね。とにかく、まずはジャドから」


「わかったよ……じゃ、頼む。ジャド」


『承知した……《はい》っと……お?』


 ジャドが《ステータスプレート》をタップすると同時に、彼の体をフワッとした光が包む。

 そしてジャドの体が徐々に変化していく。

 ゴキゴキと骨が動いているような感じがし、どことなくホラーな雰囲気がないでもないが……。

 しかし、ジャドは別に痛いとかいう感じもないようで、むしろ気持ちよさそうな顔をしているな。

 そんな時間が一分ほど続いただろうか。

 光がふっと引いて、その場に立っていたのは……。


『ふむ、なるほど。こんな感じか……』


 今までと変わらぬ様子のジャドだった。

 ただし、見た目的には結構変わっている。

 今までは身長120センチほどの、緑色の肌のゴブリンだったわけだが、今は140センチくらいになっている。

 また、かなり骨と皮、という感じだったのが、少しばかり筋肉質になっているようだった。

 顔立ちも凛々しくなったというか、知性を感じるというか。

 正しく、上位の存在になった、そんなような雰囲気がする。


「ジャドなのね? 調子はどうなの? おかしなところとか……」


 雹菜が尋ねると、ジャドは答える。


『いや、特に問題はないな。それどころから、全身から力がみなぎる。視線が高くなったことにはある意味違和感があるが……これは流石に慣れだろう』


「さっきの変わってる最中って、痛くはなかったの?」


『全く痛くはなかったな。ただ、バキバキと体が作り変えられていく感じは少し恐ろしいものもあったが……こうしてなってしまえば、特に問題もない』


「なるほどね。どうやら、それほどの危険はなさそう……ごめんね、実験みたいに、というか実験そのものになってもらってしまって……」


『構わない。誰かがいずれやらなければならないことだろうしな。それに、こうして上位種になれているので結果オーライというやつだ』


 結果オーライは、最近ジャドが覚えた言葉らしく、日本語でそう言っていた。

 どうも政府の人の一人が、口癖だったらしい。

 おかしな言葉は教えないようにしなければな……。

 プロスポーツの外人助っ人に変な日本語教えてしまったみたいな感じにならないように。

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