第435話 選択と進化
「ジャドのは分かりやすいわね。明らかに種族的に上位の種類なんだもの……さっきの声が言ってた、《種族進化》っぽい気がするわ」
雹菜がそう言った。
「言われてみるとそうだな……《種族選択》と《種族進化》と言ってた。そもそも違いってなんだろ?」
「言葉の意味通り考えると、前者はただ種族を選べるってだけで、後者は今よりも、より上位の種族になれる、みたいなことかなって感じだけど……」
雹菜がそう言うと、黒田さんが、
「人類がより上位の種族に……エルフやドワーフって人類より上位の種族なのかな?」
とあっけらかんとした口調で言う。
これに静さんが、
「……よくよく考えると難しいというか、今後問題になりそうな話ですね。種族に上下があると差別が……みたいなことにもなりえそうで」
と言う。
「あぁ、確かにそうね……。ゴブリン周りでもそうだけど、その辺りの問題はもう私たちにはどうにも出来なそうだから、いざというときまで無視しましょう。それに、エルフやドワーフを私たちが選択できるのは、《種族進化》ではなく《種族選択》の方かもしれないし。そこを検証してから考えても問題はないはずよ」
「検証って言うが……どうやるんだ? さっそく他の種族になってみるか? 戻れるかどうかを考えると怖いんだが……」
そうだ。
一番の問題がそこにある。
すぐに人類に戻れるなら、別にそれで構わないだろう。
けれど戻れない、もしくは何らかの条件が満たされないと戻れない、とかそういうことだったら、ちょっと怖い。
まぁ、条件が満たされれば良い場合で、かつその条件の見た仕方が比較的容易であるならばいいが、これが難しいとなると、結構な問題である。
それは、この選択肢が出てきた時点で、みんなすぐに考えたことだろう。
俺の言葉に難しい顔をしていた。
しかし、ジャドがそんな空気感を察したのか、
『そういうことなら、まず俺がやってみるのはどうか。俺の場合、他の種族に、といってもあくまでも上位種や近縁種になるだけだ。見た目もさほど変わらない種族が表示されているから、大した問題もあるまい。ゴブリンは他種族同士であっても繁殖も変わらず出来るしな』
と言ってくる。
確かに、ジャドの場合は、俺たちとは少し異なるだろう。
そもそも、彼の記憶の中にある世界……ゴブランでは、普通にノーマル以外のゴブリンも存在していたはずだ。
それは、俺が行ったあの崩壊したゴブランに、様々なゴブリン種族が出てきたことからもはっきりしている。
そしてだからこそ、抵抗感も少ないのだろう。
ただそれでも……。
「……いいの? 元に戻れないかもしれないわよ」
雹菜がそう尋ねる。
やらなくていい、とまで言えないのは、いずれ必ず誰かがこれを検証しなければならないからだ。
まぁ、世界には頭のおかしい人というのも沢山いるから、放っておけば誰かが確実に試すだろうから、その情報を待つ、という方法もある。
けれど、俺たちは冒険者だ。
世界を探索、冒険する者で、迷宮関係に関する情報は可能な限り早く、正確に仕入れたい。
それが出来るチャンスがあるのなら……ということだ。
ジャドがやらなくても、他のメンバーの誰かがやるだろうしな。
なんなら、ジャドの後にやるかもしれないし。
そんな感じで尋ねた雹菜に、ジャドは頷いて、
『うむ、構わない。この中だと……《ゴブリン《ハイ》》などは見た目にもさほど変化はないはずだ。ただ、ステータスは大きく上がるとは思うが……早速やってみるがいいか?」
そう言ったのだった。
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