第431話 政府でのゴブリンの扱い
「スキルの《虚実看破》はあれだよな。人の言ってることが嘘かほんとかわかるって奴。交渉とかにはすごい便利そうだ」
俺がそう口にすると、ジャドは頷いて答えた。
『うむ。そうだな。とはいえ、それほど万能でもないようだが……』
「っていうと?」
『ここ数日、日本政府の者たちに色々と連れ回されたり、実験を行ったりしたのだが……』
「実験って、大丈夫だったのか?」
解剖されたり、電気ショック流されたりとかがまず頭に思い浮かんでしまう。
これについては雹菜が、
「私の方からも、引き渡す時、そういうことがないように色々言っておいたから大丈夫よ。それに創は行ってないけど、他のギルドメンバーが黒田さんと一緒に着いてってたでしょ。報告も受けたけど問題なかったわ」
ジャドの代理人としての役割をギルドで請け負った以上、彼の安全の確保のために常に彼にはうちのギルドのメンバーがついていた。
俺も行きたかったのだが、まさに実験と言う名で俺の色々を知られる可能性があるのはまずかろうと、俺だけ留守番になってしまったのだな。
だからここのところ暇だった……。
とはいえ、それで問題なかったのだから良いのだけど。
「そうだったのか……。じゃあどんな実験を?」
『単純なものだと、鑑定を受けたことだな。もちろん、シズカほどには見えなかったようだが』
「あぁ、なるほど。それくらいするよな」
『しっかり同意も取られたから、悪い扱いではなかった。鑑定の後に、スキルを試したり、あと実際にステータスが人間と同じような基準で数値化しているかなどを調べられた』
言われてみると、それは気になる。
人間のステータスで10なのと、ゴブリンのステータスで10なのと、全く同じ意味なのか。
実は種族によって違う、とかもありうる。
「結果は?」
『ほぼ同じだったようだ。ほぼ、と言うのは、その時の調子とか、力の入れ具合とか、そう言うところで出る誤差くらいはあったという程度でな。つまりは同じだと見ていいということだろう』
「ふむふむ、他には?」
『スキルも試したんだが、格闘術の方には気になるところはなかった。虚実看破の方は、面白い経験をさせてくれてな。明らかに相手が事実とは異なることを言っているのに、俺には見抜けなかった』
「え、そんなことあるのか?」
俺がそう呟くと、雹菜が言う。
「あるわね。本人が本当にそれを事実だと思っていっている場合には、見抜けない、みたいなことよ」
「あぁ、そういう……。勘違いで地球が平面だと思ってる人に、地球は平面ですか、と聞いて、そうだと答えたとして、真実を言っているようにしか感じられないってことか」
『まさにそういうことだった。だから、よくよく気をつけるべきだという話だったな。思った以上に親切にそういうことを教えてくれるものだから、驚いた』
「平賀総理の采配だからなんだろうな」
あの人は誠実だ。
それは国民に対してだけでなく、ゴブリンに対しても発揮されるようだった。
続けて、雹菜が、
「最近は海外から日本に入ってくる人も増えてるからね。ゴブリンの集落はなぜか日本が多いみたいだから、探しに来てるみたい。見つけたところでまともな報告をしないパターンもすでにあるみたいだから、政府としてはまず、種族の保護と権利意識の徹底を図っているみたいよ」
そう言った。
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