第427話 他国の事情
「ちなみにですが、他に確認されている種族って……?」
雹菜がギルドとして、少しでも情報を得ておこうと思ったのが突っ込んで尋ねる。
平賀総理は苦笑して、
「まるで記者のようだな」
と言ったが、雹菜は引くことなく、
「記者ではなく、冒険者ですよ。私たちも、こうして政府とゴブリンの架け橋になろうと率先して動いているのですから、少しくらい情報を頂いてもバチは当たらないでしょう?」
と図々しくも言う。
しかしこれくらいのことが言えなければ、ギルドリーダーなんてやってられないから、姿勢として正しいだろう。
平賀総理も、別段、何が何でも隠さなければならない話ではないと思っているのか、言う。
「分かった分かった。君とはお姉さんも含めて、これから先も長い付き合いになりそうだからな……ただし、ここで話す内容はオフレコだ。君たちもだぞ」
と、俺たちにまで念押しをする。
俺たちが頷くと、平賀総理は言った。
「とは言え、そこまで深い内容でもないが……まず、イギリスにはエルフ族がいるようだ」
「エルフって言うと、あの耳が長くて美人で魔術に長けている?」
俺が尋ねると、総理は頷いて答えた。
「あぁ。私たちの世界のエルフと同じものかどうかは分からないがね。それを言うなら、ゴブリンも同様だろうが。あくまでも、私たちの世界の存在、名詞に直すと、そう聞こえる、と言うだけのようだが」
確かに、雹菜曰く、ジャドが自分たちのことを《ゴブリン》と言っている時、別にゴブリンとは聞こえないらしい。
全く違う単語に聞こえてくるが、黒田さんはその単語を《ゴブリン》と認識しているというに過ぎないようだ。
ステータスだかスキルだかが、勝手に翻訳してくれているのだろうな。
「いわゆる一般的なエルフとの共通点などは?」
雹菜が尋ねると総理は答える。
「見た目の美しさや、耳の長さ、それに術に長けているところは概ねその通りらしいな。ただ、私も実際に会ったことがあるわけではない。向こうがそう言っているだけだな。何度か合わせてもらえるように頼んだのだが、今のところいい返事は貰えていない。まぁこっちも人のことは言えない。妖人の存在すら明かしていないわけだからな」
「なるほど……でもそのエルフたちとはしっかり意思疎通出来ているのですね」
「そうだな。しかし重要な部分を尋ねようとすると、向こう側の話が聞き取れなくなることがあるらしい。向こうが話したがらない、というより、何かに阻まれているという感じのようだが……」
これは、俺が梓さんから話を聞こうとした時と同じ現象だろうな。
ということは、エルフは色々と知っているわけか。
そういえば、だいぶ前に、エルフみたいな奴らが何か語ってる幻覚のようなものを見た覚えがある。
あれと関係がある種族なのか……?
実際に会わないとわからないが、気になる。
平賀総理は続ける。
「他には、そうだな……ドイツにはドワーフがいるようだ。これも、本当に私たちの知るそれと同じかはわからない。ただ、手先が器用で、力があり、身長が低く、年齢がいくつであっても老人のように見える、という点は同じようだな。ただ、女性についてはなぜか、いくつであろうとかなり幼い容姿をしているようだが……」
「手先が器用、ということは、何か特別なものを作ることも?」
「あぁ、魔導具や武具については、私たちが作るものとは全く違う技法で、かなり性能のいい品を作るようだ。これについては日本にもサンプルがいくつか送られていて、買い取って、冒険者省直属の高位冒険者に使わせる予定だ」
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