第411話 称号
「……創、はぐれゴブリンの目撃例があったわよ!」
俺が佳織と迷宮に行ってきてから二日後、ついに、はぐれゴブリンの目撃例があったと雹菜から報告される。
厳密に言うなら、すでに何件かは見つかっているのだが、いずれも見間違いだったり、見つかっても逃げてしまってその後探しても見つからなかったり、みたいなのが大半だった。
しかし今回のは違うようだ。
「……この辺りで何度も目撃されてるらしいの。冒険者じゃなくて、一般人が目撃しただけだから、向こうもまだ警戒していないと思うわ」
「なるほど。じゃあすぐに向かった方が良いか」
魔物というのは、はぐれになると賢く強くなると言われる。
強い部分はまぁ今はとりあえずいいのだが、賢いというのは色々と策を練りだしたりなど、考えるようになっていくということだ。
だから周りに強い人間……つまりは冒険者などがいることを察知すると、危険だという判断も普通にする。
迷宮の魔物はその辺が馬鹿というか、狂気的な勇気を持っているというか、どれほど強力な冒険者が相手であっても、一切怯まずに立ち向かっていくことが多い。
まぁ、中にはやっぱり他の個体より賢いのがいたりもするのだが、はぐれに比べると割合的にかなり低いと言うことだ。
俺の言葉に雹菜が答える。
「そうなるわね。ただ、ゴブリン語を私も創も話せないでしょう? まぁ、創のステータスに妙な称号が増えてたから、その効果でいけたりもするかもしれないけれど……」
「どうなんだろうな。説明が微妙だったし、なんとも言えないな」
雹菜が触れたのは、俺のステータスに増えていた称号のことで、これは雹菜と色々話し合った後に、そういえばステータスが上昇しているのを確認しようという事になったときに気づいたものだ。
俺としては、単純に数字が上がっただけかと思っていたのだが、そうではなく、称号に《ゴブリンの王》の文字が増えていた。
これについてはタップするとしっかりと説明文が出てきた。
フレーバーテキストというのか……。
《ゴブリンの王》:ゴブリンの頂点、ゴブリンの王であり、ゴブリンを継ぐ者。必ずしもゴブリン族である必要はなく、前王より譲られることにより就任できる。前王ペルシュより直接譲渡された。
そんな感じである。
俺はゴブリンキングなのか……。
人間なのに……。
しかし、別に見た目がゴブリンになったりしていないし、何か特別な力を持っているという感じも特にない。
《ゴブリンの王》がいかなる効果を持っているのかについては全く記載がなく、ただそういう称号なんだなぁ、ということが分かる文章しか書いてないので、結局なんなんだよと言う気分になる。
ただ、この世界のゴブリンが話し出したのは、俺がこれを譲り受けた事による効果なのではないか、という推測は立つ。
他にも効果がありそうだとも。
もしかしたらゴブリンと会話できたりもするんじゃないか?という期待もある。
「創の称号でゴブリン語話せたら一番なんだけど、そうとは言い切れないからね。一応、ゴブリン語を持ってる《翻訳士》を手配しておいたわ」
「お、本当か。ありがたい……けどどこにいるんだ?」
「現地で待ち合わせにしてるの。創が《ゴブリンの王》の称号があるとか、異世界でゴブリンから何か受け取ったみたいな話はもちろん言ってないから、その辺はうまく誤魔化しておいてね」
「あぁ、もちろん。じゃあ行くか」
「ええ」
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