第408話 報告

「……キューっ!」


「おっと、霙。悪いな、最近なかなか一緒にいられなくて」


 五反田本部に戻ると、そこで留守番していた霙が飛び込んでくる。

 本当なら自宅にも連れて行きたいのだが、霙はこれでかなり貴重な存在だ。

 十分な守りが出来ないメンバーでいるときに連れていくのは難しく、家まで連れてけるのは俺と雹奈が一緒にいる時くらいになっている。

 まぁでも、俺もそれなりになってきたし、そろそろ一人と一匹でも大丈夫かなとは思うが、補助術系がもう少しでギアをひとつあげられそうなので、そうなってからかな、とは考えている。

 俺と一緒にいない時の霙の待機場所はギルド本部か支部で、ギルドメンバーが必ず一緒についているので誘拐の危険は少ない。

 もちろん絶対ではないが、かなりの防護設備があるし、いざという時は脱出経路も確保されてるから。

 

「わぁ、霙ちゃん。久しぶりだね」


「キュキュっ!」


 佳織も霙には会ったことがあり、可愛がっている。

 霙の方も覚えているようで、ごろごろと甘えるように佳織に頭を擦り付けていた。

 そんなことをしていると、


「あ、二人とも来たわね。じゃあこっちに来てくれる?」


 と雹奈が降りてきた。

 そして応接室へと先導する。


 辿り着き、椅子に座ると、


「じゃあ、早速だけど何があったのか報告して。佳織ちゃんは別にうちのギルドメンバーってわけじゃないから、その義務があるわけじゃないんだけど、教えてくれると助かるわ」


 そう言ったので、まず佳織から話し始める。

 

 ******


「なるほどね。ありがとう佳織ちゃん。電話口でも大体話してもらったことと同じで、二度手間になって申し訳なかったけど……」


 雹奈がそう言うと、佳織は慌てて首を横に振った。


「いえいえ! そんな……。それに、今回のことは私がお兄ちゃんに無理に迷宮に連れてって、って頼んだのが原因ですから……」


「兄妹だもの。それくらいのお願いは普通でしょう。大体、創が妙なことに巻き込まれる体質なのが原因よ」


 辛辣にそう言い切るが、全く否定できない俺は黙って聞いてるしかなかった。

 それから、佳織が気を使って、


「では、私は部屋を出ますね。向こうでも聞きましたけど、ここから先の話はギルド外には言えない話だってお兄ちゃんが言ってたので……」


 そう、佳織が話したのは彼女が見たものだけにすぎない。

 あの黒い穴の中で起こったことはまだひとつも話してないのだ。

 そして本来そちらが重要だが、佳織には言えない。

 雹奈はそんなことを理解してる佳織に、


「……本当に佳織ちゃんはしっかりしているわ。やっぱり、卒業したらぜひうちに入って欲しいわね。もちろん、今から決め切る必要はないけれど」


「そうやって誘っていただけて、私、本当に嬉しいです! きっと入りますよ! そのためにはまず学校の成績上げなきゃ……」


「今でも十分戦力になりそうな腕前に思えるけど……あぁ、そうね。今日は静がいたはずだから、色々と話を聞いてみれば? 前に聞きたいことがあるって言ってたじゃない」


「えっ、本当ですか?」


「2階にいたはずだから、内線で言っておくわ。帰りはお兄ちゃんと帰りたいでしょ? 終わったら連絡もするから」


「ありがとうございます! じゃあ、私は本当に失礼しますね……」


 そして、佳織は部屋を出ていく。

 しっかりと足音と気配が遠ざかり、階段を降りたところまで察知したところで、雹奈が言った。


「……ふう。それで、一体何があったの? 黒い穴の先にあったのは……やっぱり、異世界?」


「あぁ、それなんだが……」


 そして、俺は向こうであったことを話していく。

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