第398話 奇妙な場所
「……ここは……?」
黒い穴に呑まれて、俺は目を開く。
するとそこにあったのは妙な空間だった
俺は、あそこから異世界へと再度、転移することになると思っていたが……。
「変な場所だな。異世界だから……? いや……」
辺りにあるのは、バラバラになった足場だ。
浮島のように、石造りの足場がそこここに浮いていて、奇妙な材質の橋のようなもので僅かに繋がれている。
それ以外の空間は星空のような、宇宙のような、奇妙な背景に彩られていて、およそ人の気配を感じなかった。
ここが異世界だと言われれば、そうなのだろうと頷けるが、以前俺が転移した場所のような、文明がある場所だと言われても首を傾げたくなる。
そんな空間だった。
そして、俺はふと思い出す。
「……そうだ。《ステータスプレート》に、ここが異世界ならそれが表示されているはず……」
そう思って、世界欄を開いてみると、現世界の項目には……。
「……《崩壊世界ゴブラン》? 崩壊世界って……」
不気味な表記だった。
ここは壊れた世界ということなのだろうか?
そう言われると……足場もバラバラだし、空もないし、けれど何か、空中にボロボロになった人工物のようなものが流れ星のように行き過ぎるのは見える。
「本当に、壊れた世界だって言うのか……いや、それはいいか。それよりも、戻れるかどうかだが……」
改めて《ステータスプレート》を見る。
以前に転移したときと違うのは、ここにどこに行けば地球に戻れるのか、それが記載してあるはずで、これを見れば戻れるはずだと最初から分かっていることだろう。
少なくとも、マグスガルドではプレートの表示通りの迷宮、階層、場所に行けば、地球に戻れたのだから。
しかし、ここではそうではないかもしれない。
そう思うと不安な気持ちがもたげるが、祈りながら《ステータスプレート》の目的の項目を開く。
「……頼む! ……よし。やっぱりちゃんと戻れるんじゃないか……でも、不思議な表示だな?」
そこにあったのは、この世界そのもの?の地図だった。
マグスガルドでは世界の名前の他に、地球に戻るための転移層がある、迷宮の名前や階層が表示されていたが、ここではただ《崩壊世界ゴブラン》としか記載されておらず、けれどしっかりと地図が書いてある。
ということは、これこそが世界そのものの地図なのだろうと推測できるが……それにしても迷宮っぽい構造だった。
俺が今、立っているような浮島。
それが無数に奇妙な材質の橋で結ばれ、それが繋がり続けているような地図だ。
そしてそれが最後に、ある一点に集約している。
どうやらそこから地球に転移出来るようだが……。
「……分からないことが多すぎて怖いな。でも……行くしかないか。佳織だって心配しているはずだ。時間は……地球と同期してるな。これなら急げば夕方までには行けるんじゃないか……?」
以前のように、何ヶ月もこの世界をさまよう、なんて羽目にはならなそうな予感に、俺は少しほっとする。
とはいえ、何があるか全く想像がつかないから、しっかりと武具を確認し、注意しながら進まねばと気を引き締める。
また、アーツの類も、全く遠慮せずに使っていこうと思った。
補助術系を使えば、よほど強力な存在が現れない限りは、大丈夫なはずだ……。
なんでそんな心配をしているかといえば、確かにこの世界に人はいなさそうなのだが、少し離れた場所に、魔物の姿が確認できるからだ。
先に進むためには、戦闘はどうにも避けられなさそうで、俺は覚悟を決めて歩き出す。
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