第391話 佳織の頼み 2

「公平って、色々聞けてる時点で公平でもない気がするけど」


 佳織がそんなことを言う。

 まぁ確かにそうと言えばそうなんだが……。


「インターン受け入れるにしても、誰にするかとか選ぶのは基本、俺たちじゃないからな。あまりにも問題があれば断れはするけど、推薦してくるのは学校側だし」


 少なくとも、高校にインターンを受け入れると申し入れた場合には、そうなる。

 もっと広く、いわゆる既卒でも一旦うちを体験してみないか、みたいな感じだとギルド側で全て決められるが、学校を挟むと学校の決定を基本、そのまま呑む形になるからだ。

 問題ある場合ってのは、それこそ変なねじ込みとかそういうのがある場合だな。

 昔は良くあったらしい。

 誰か政治家の息子だとかそんなのだ。

 しかし、今はほとんどない。

 なぜかと言えば、それでインターンをやったところで、派遣先のギルドでまともに活動できることは少ないからだ。

 黎明期なら、冒険者の実力というのはかなり流動的で、どういう将来があるのかなんて新人の頃はほとんど見えなかったが、今は育成の仕方とかもかなり進んでいるからな。

 ある程度これくらいの実力は期待する、という基準が割とはっきりしていて、それ以下だとどれだけコネがあろうと意味がない。

 そういう意味では、佳織や大和くんはかなり期待が出来るから大丈夫だとは思うが……。


「それはそうだけど……。まぁ、私たちからすれば、学校の成績を上げられるよう、頑張るしかないね……」


「佳織は成績いいんだろ? あと大和くんも」


「まぁ……私は実技はトップだけど、座学の方がね。大和は実技も座学も上位だけど、どっちも二位三位くらいだから……うーん、大和の方がそう考えるとインターンに近い?」


「実技トップ、座学十位、とかよりは実技も座学も二位三位くらい、の方が学校の評価は高そうだな。実際迷宮に行くとなれば、実技の方がものを言うが、未踏破区域とかに行くとなると、事前準備とかの能力も問われるし、そうなると座学も重要になってくる」


「迷宮とかスキルとか魔物とか、大和は詳しいから……」


「あの感じで腕っ節だけってわけじゃないのは好感が持てるな。確かに、模擬戦のときも色々と考えて戦ってる様子だったし」


「結局お兄ちゃんには勝てなかったけどね」


「流石に学生にはまだ負けられないよ……っていうか、だいぶ話がずれたな。迷宮に連れてけって?」


「おっと、そうだった。駄目かな?」


「いや、別に構わないけど……」


 学生だろうと一般人だろうと、自由に入れる迷宮はある。

 それに、冒険者でなければ原則入れないような迷宮も、冒険者が一人いれば連れを一人二人入れられるようなところもある。

 迷宮によってルールは異なるけどな。

 この辺りは、あまり雁字搦めにして一般人が隠れて入ってしまうとむしろまずい、という事実があるからだな。

 昔は一般人完全立ち入り禁止の迷宮が多かったが、そういうところに真夜中とか人がいないときを見計らって無理に侵入する連中がいたのだ。

 そういう奴らはなぜはいるか、と言えば色々理由はあるが、一番わかりやすいのは冒険者としての適性を手に入れたいからだな。

 今はそんな無茶をしなくても冒険者適性を手に入れられる可能性のある方法というのはいくつかあるが、当時は迷宮に入って魔物を倒せば確実だとか言われていたのだ。

 確かにそれは有効ではあるが、本当にただの一般人だとゴブリンにすらかなわずに肉塊にされてしまう。

 だから、そういう事故が多発してしまって、結局迷宮は冒険者の付き添いがあれば入ることが可能なようになったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る