第359話 上位スキル取得

「……よし、これで《中位爪術》と《中位牙術》は覚えさせたから……」


「後は上位のものがリストに出ているかどうかね……」


 俺の呟きに続いて、雹菜はくながそう言った。

 静さんは無言で目を皿にして俺の《ステータスプレート》のリストを見つめている。

 そして……。


「あっ、見つけましたよ! やはり、一つ下のランクのスキルを覚えなければより上位のものは出てこない、ということのようですね。これは、人間も似たような仕組みなのかしら……? 別にスキルポイント、なんてものは出ないけど……いえ、もしかしたら、隠しステータス的なものがある? 最初は霙ちゃんのステータスだって見えなかった項目があったわけだから……」


 静さんが見つけると同時に、思索に入ってしまった。

 これは、スキルを今までたくさん見続けた者としてのサガなのかもしれない。

 

「話しかけても反応しなさそうだな……」


「まぁ静ってこういうとこあるから。それより、上位の爪術か牙術、スキルポイントいくつ使うか見ましょうよ。気になるわ」


「そうだな……よし」


 俺は頷いて、《ステータスプレート》の《上位爪術》をタップした。

 すると……。


 スキル《上位爪術》を覚えますか? スキルポイント25を消費しますがよろしいですか?


 そう表示された。


「25……! うーん、多いのか少ないのか微妙だな」


「多いんじゃない? これだと、今のポイントだと上位スキルは全部で三つまでが限界っぽいもの。下位が1で、中位が5、上位が25ということは……五倍ずつになっていくわけね」


「五倍かぁ……なんか理由あるのかな?」


「どうでしょうね。あったとしてもすぐに想像つくような気はしないわ。研究者に任せるのが一番かも。まぁ何も考えないわけじゃないけどね、私たち冒険者だって」


「私だって考えますよ」


「あ、戻ってきた」


 静さんだった。


「……ですけど、やっぱりすぐに分かることでもないですね。これからも継続して調べていく必要があるでしょう、霙ちゃんについては」


「まぁそうだよな……後は、《上位爪術》を試してみたいけど……」


「しばらくは無理かもね。ほら、来週、高校の実技講習があるでしょう。カリキュラムある程度作る必要があるわ。それに、私も取材があるし……そっちにもついてきて欲しいもの」


「別に今更、俺がマネージャーみたいなことまたやらなくてもいいんじゃないのか?」


 もうすでに俺がいない間もその辺りはしっかり回ってたわけで、じゃあ別に俺は、と思ったのだが、


「創さんの代わりは私が務めてましたから、代わっていただけるのならその方が……」


「静さんはなんで代わって欲しいんだ?」


「ギルドメンバーの皆さんの実力がだいぶ上がってきてますからね。それに比例してギルドに納入される素材などの数が増えてきてるので、片手間で鑑定するのも厳しくなってきてるのですよ。それで、新しく鑑定士を採用して鑑定部を立ち上げる予定なんですが、そちらに力を入れたくて……」


「あー、なるほど」


「創さんでなくても、雹菜のスケジュール管理は出来るんですけど、やっぱり余人には明かせないことが結構ありますからね。しばらくは、ギルドの中心メンバーだけで回していきたいと思っていまして。これは雹菜も同じ気持ちです」


「そうなのか?」


 雹菜に視線を向けると、彼女も頷いて答える。


「ええ、最近は国からの仕事も地味にあるのよね。そういう時に、話せる相手は流石に中々いないし」


「まぁ、そういうことなら仕方ないか……それに、雹菜と長く一緒にいられるのは俺も嬉しいし、引き受けるよ」

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